医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Transforming self-experienced vulnerability into professional strength: a dialogical narrative analysis of medical students' reflective writing (Adv Health Sci Educ Theory Pract 2024)

Valestrand EA, Kvernenes M, Kinsella EA, Hunskaar S, Schei E. Transforming self-experienced vulnerability into professional strength: a dialogical narrative analysis of medical students' reflective writing. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2024 Feb 24. Epub ahead of print.

背景:医学生が人間中心の思考と行動を学ぼうとする努力は、人間中心の臨床の理想と、一般的な医学の認識論的固定観念との間の不協和のために失敗に終わることがあり、そこでは、医師の生活上の出来事、人間関係、感情は、専門家としての能力とは無関係に見える。この論文では、個人的な人生経験を振り返り、将来の職業的実践との関連性を考えることが、医学部1年生のプロフェッショナル・アイデンティティの最初の探求にどのように役立つかを探る。

方法:このnarrative inquiryでは、医学部1年生がメディカルスクール入学前の個人的な経験が将来の医師としてどのような影響を及ぼすかについて考察した68のエッセイについて、対話的ナラティブ分析 (dialogical narrative analysis)を行った。学生は、20人の患者との出会い、人間中心理論入門、ピアグループでのディスカッション、内省的ライティングを含む6ヶ月のコースの終わりに文章を書いた。分析対象は、医学生が個人的アイデンティティとプロフェッショナル・アイデンティティを織り交ぜ、区別するプロセスであった。

結果:分析の結果、4つのカテゴリーが得られた。(1) 医学生は、病気や苦しみ、人間関係の葛藤を、自分自身の経験に対する新たな視点を提供する文脈との相互作用のなかで、どのように語っていたのか。学生たちは、以下のような方法で、医療活動に対する人間中心志向のアイデンティティを形成した: (2) 患者の脆弱性を認識し共感すること、(3) 物語を共有することによる癒しの機能を経験すること、(4) 個人的な経験を専門的な力に変えること。

結論:医学生が自分の感情的な人生経験を再考し、振り返り、再解釈することを奨励・支援する医学教育への革新的なアプローチは、医療業務に対する人間中心的志向を支援するような方法で、プロフェッショナル・アイデンティティを形成する可能性がある。