医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'Good' and 'bad' doctors - a qualitative study of the Austrian public on the elements of professional medical identity (Med Educ Online 2022)

Grundnig JS, Steiner-Hofbauer V, Katz H, Holzinger A. 'Good' and 'bad' doctors - a qualitative study of the Austrian public on the elements of professional medical identity. Med Educ Online. 2022;27:2114133.

背景:プロフェッショナル・アイデンティティ形成は医学教育の重要な焦点となっているが、学生がプロフェッショナル・アイデンティティを形成するための支援方法については、まだ学ぶべき点が多い。公共や患者を中心としたケアといった影響力のある概念が共通の価値観となった現在、研修生が研修中に採用しうる公共に関する概念についての研究はほとんどない。「良い」医師と「悪い」医師の特徴を定義することは、専門家としての行動の側面をどのように医学カリキュラムに組み込むかを検討する際の出発点となりうる。そこで、本研究は、「良い」医師と「悪い」医師の特徴について、オーストリア国民の視点を記述することを目的とした。

方法:質的研究デザインを用いて、オーストリア国民(n = 1000、平均年齢46.4 ± 15.8歳)に対してインタビューを実施した。インタビューは逐語的に書き起こし、質的内容分析によって分析した。

結果:回答者は、「良い」医師について2078件、「悪い」医師について1728件の回答を述べた。内容分析の結果、「社会性」(36.3%)、「専門能力」(30.2%)、「性格」(10.8%)、「コミュニケーション」(6.3%)、「診療組織」(5.9%)、「倫理・道徳行動」(5.7%)、「わからない・全くわからない」(4.9%)の7項目となった。

結論:社会が医師に期待する職業的価値の探求とそれへのコミットメントを支援することで、一般市民は医学生のプロフェッショナル・アイデンティティの構築を支援することができる。理想的には、医学的専門知識と社会的スキルを融合させることで、世間が考える「良い」医師の理想を満たすことができるのである。この「良い医師」の定義の共有は、医学教育にもいくつかの示唆を与えている。将来の医師は、一般の人々の医療ニーズだけでなく、個人的なニーズ、恐れ、懸念などについての教育から恩恵を受けることができる。