医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

MERIT: a mentor reflection instrument for identifying the personal interpretative framework (BMC Med Educ 2021)

Loosveld LM, Van Gerven PWM, Driessen EW, Vanassche E, Artino AR Jr. MERIT: a mentor reflection instrument for identifying the personal interpretative framework. BMC Med Educ. 2021;21:144.

背景:メンターの専門的な能力の成長には、メンターの実践を支える知識や信念を明確にし、批判的に挑戦することが不可欠である。本論文では、メンターが自分の実践をどのように、何を、なぜ実践しているのかを体系的に振り返ることを支援するため、MERIT (MEntor Reflection InstrumenT)と呼ばれる調査ツールの開発を報告する。

方法:2019年に、20項目の調査ツールが開発され、試験的に実施された。初期検証データ (N = 228)は、著者のネットワークを通じて調査票を配布することで収集した。探索的因子分析 (EFA)を実施し、内部整合性信頼性係数を算出した。

結果:主因子法・直接オブリミン回転 (Delta = 0)のEFAにより、4つの因子が得られた。すなわち、1) 自己成長の支援、2) 専門的な能力の成長のモデル化、3) 自律性の育成、4) パフォーマンスのモニタリングであった。この4つの因子は、項目スコアの総分散の43%を説明した。サブスケール得点のCronbachのアルファ係数は0.42–0.75であった。

結論:MERITは、メンターが自分の信念と専門的なノウハウを振り返るのに役立つ。これらの省察は、メンターが実施する教員育成の取り組みへのインプットとなり、最終的にはメンターとしての知識とスキルを向上させることができる。

Resilience and sense of coherence in first year medical students - a cross-sectional study (BMC Med Educ 2021)

Luibl L, Traversari J, Paulsen F, Scholz M, Burger P. Resilience and sense of coherence in first year medical students - a cross-sectional study. BMC Med Educ. 2021;21:142.

背景:幅広い研究から、医学生の精神状態が著しく悪化していることが多いことが明らかになっている。メディカルスクールに入学した医学部生は、母集団の平均値に匹敵する値で入学したにもかかわらず、わずか数学期後には、心理的リスク状態の割合が増加し、バーンアウトうつ病などの顕在化した精神疾患を示すことが明らかになっている。本調査では、精神的な健康状態のパラメーターを、意図的に健康生成論の観点から、すなわち資源を重視した観点から評価した。

方法:医学生1年生を対象とした横断的研究で、アントノフスキーのsalutogenesisモデルに基づくパラメータとしてのsense of coherence (SOC)とレジリエンスを、validateされた自己記入式質問紙を用いて、構造化された方法で評価した。合計で、フリードリヒ・アレキサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク校 (FAU)の人間医学、歯学、分子医学の学生236名を対象に調査した。

結果:分析の結果、女子学生に比べて男子学生の方がレジリエンスの値が有意に高かった(p < 0.01)。一方、レジリエンスとSOCの間には有意な相関が見られたものの、女子学生ではSOCの値が有意ではないが低くなっていた。参考サンプルと比較して、本研究の医学生の1年目の学生では、レジリエンス (p < 0.01)とSOC (p < 0.01)の値が有意に低くなっていた。

結論:レジリエンスとSOCは、心理的ストレス(バーンアウトの指標)やうつ病と相関があることが知られている。医学生のSOCやレジリエンスなどの防御因子を良好で健康的なレベルに維持するためには、この問題に積極的かつ教育的に取り組む必要があると考えられる。そのためには、医学生自身のメンタルヘルスの維持に焦点を当てた教育を、大学入学時から医学教育課程全体に組み込むことが不可欠であり、教育目標とすべきであると考える。また、本研究の結果を踏まえ、生物学的性別に依存した学生のニーズに対応するための方策を検討する必要があると考える。

Moral judgement development during medical student clinical training (BMC Med Educ 2021)

McDonald J, Graves J, Abrahams N, Thorneycroft R, Hegazi I. Moral judgement development during medical student clinical training. BMC Med Educ. 2021;21:140.

背景:若年成人のほとんどは経験と認知の成熟が道徳的判断力の発達を促進するのに対し、医学生の道徳的発達は臨床トレーニング期間中に鈍化 (slowing)、退行 (regression)、または細分化 (segmentation)を示す。本研究の目的は、臨床トレーニング中の医学生の道徳的発達を探ることである。

方法:2018年にオーストラリアのメディカルスクールで、3年間の臨床トレーニング中の医学生を対象に、グループまたは個別にインタビューを行った横断的なサンプルを用いた。テーマ分析により、3つのテーマが特定され、それらはその後、Self-authorship Theoryの段階と次元に対してマッピングされた。

結果:3~5年の医学生35名が11回のインタビューと6回のフォーカスグループに参加した。学生は、彼らが彼らの先輩と識別され、ますます臨床の文脈を理解したように彼らの臨床経験の影響を共有した。学生たちの話からは、初期の混乱に続いて、脱感作 (desensitization)と正当化 (justification)を特徴とする防衛意識 (defensiveness)がテーマとなっていることが明らかになった。卒業が近づくにつれ、学生のなかには、将来の実習でどのように道徳的な選択をするかを計画している人もいた。これらのテーマは、self-authorshipの段階にマッピングされた: 外部の公式 (External Formulas)、岐路 (Crossroads)、Self-authorshipである。

結論:医学生は、臨床現場での道徳的判断を認識し、調整し、理解することで、self-authorshipに成功したり、近づいたりすることができる。臨床トレーニング中のカリキュラムとサポートは、この進展にマッチし、支援すべきである。

Gaining interprofessional knowledge and interprofessional competence on a training ward (Med Teach 2021)

Mette M, Baur C, Hinrichs J, Narciß E. Gaining interprofessional knowledge and interprofessional competence on a training ward. Med Teach. 2021 Mar 2:1-14. doi: 10.1080/0142159X.2021.1885638. Epub ahead of print. PMID: 33651970.

背景:2017年以降、ドイツでは多職種連携研修病棟 (interprofessional training wards)が設置されている。これらの病棟では、様々な医療専門職が協力して、バックグラウンドからのファシリテーターが監督する患者ケアを提供している。我々は、マンハイムの多職種連携研修病棟MIAへの強制配置後に報告された多職種連携知識と多職種連携能力の向上を調査した。また、これらの知識と能力のレベルをコントロール群と比較した。

方法:この準ランダム化比較試験では、質問紙を用いて多職種連携学習のアウトカムに関する自己申告データを収集した。実験群とコントロール群との間で、(a) 実験群のテスト前・後のデータ、(b) 多職種連携の知識と能力のレベルを比較するためにt検定を用いた。

結果:MIAの参加者は、研修病棟に配置されている間に多職種連携の知識と能力が有意に増加していることを認識していることが確認された。また、MIA参加者はコントロール群に比べて、多職種連携の知識と能力のレベルが有意に高かったと報告した。

結論:多職種連携研修病棟での実習は、実際の患者ケアのなかで多職種連携を体験し、実践することを可能にする。将来の医療従事者が多職種連携チームのなかで専門的な役割を担い、可能な限り最高の患者ケアを提供できるように準備するのに役立つ。

Mindfulness-based mobile app reduces anxiety and increases self-compassion in healthcare students: A randomised controlled trial (Med Teach 2021)

Orosa-Duarte Á, Mediavilla R, Muñoz-Sanjose A, Palao Á, Garde J, López-Herrero V, Bravo-Ortiz MF, Bayón C, Rodríguez-Vega B. Mindfulness-based mobile app reduces anxiety and increases self-compassion in healthcare students: A randomised controlled trial. Med Teach. 2021 Feb 28:1-21. Epub ahead of print.

背景:本研究の目的は、医療系の学生集団を対象に、マインドフルネスをベースとしたモバイルアプリケーションと対面式のマインドフルネスをベースとしたトレーニングプログラムの効果を、不安の軽減と共感性、自己理解、マインドフルネスの向上という観点から比較することである。

方法:著者らは単盲検、ランダム化比較試験を3つの並行群で実施した。参加者は、モバイルアプリ、対面式マインドフルネスベースのプログラム(in-person mindfulness-based program; IMBP)、またはコントロール群に割りつけられた。ベースラインと介入後(8週間)の評価には、不安、共感、self-compassion、マインドフルネスの測定が含まれていた。

結果:ランダム化された168人の学生のうち、84人がintention-to-treatベースで分析された (モバイルアプリ群 n = 31、IMBP群 n = 23、コントロール群 n = 30)。モバイルアプリ群では、コントロール群と比較して、特徴的な不安の減少に対して大きな効果が示され (g = 0.85、p = 0.003)、IMBP群と比較して中程度の有意ではない効果が示された (g = 0.52、p = 0.152)。両介入群の参加者は、コントロール群と比較して、self-compassionとマインドフルネスの有意な増加を経験した。共感のレベルは3つの群で変化はなかった。

結論:モバイルアプリは、医療系学生の不安を軽減し、self-compassionとマインドフルネスを向上させるのに、IMBPと同様に効果的である。

Reimagining Well-Being Initiatives in Medical Education: Shifting from Promoting Wellness to Increasing Satisfaction (Acad Med 2021)

Slavin S. Reimagining Well-Being Initiatives in Medical Education: Shifting from Promoting Wellness to Increasing Satisfaction. Acad Med. 2021 Feb 23. Epub ahead of print.(※ 今回はoriginal articleではなく、invited commentaryより。)

・医学教育におけるwell-being運動は10年以上前から行われている。COVID-19 pandemicやそれ以降の流行に対応して医学と医学教育が進化していくなかで、学習者、教員、スタッフのメンタルヘルスのニーズをサポートするために、これらの取り組みを検証し評価することは適切であると思われる。これまでのところ、well-beingを促進することを目的とした介入のほとんどは、苦痛の環境的要因よりも個人の戦略に焦点を当てており、主に提供されているのは、マインドフルネス、瞑想、ヨガ、栄養学、運動、睡眠などの戦略である。このプログラムに対する医学学習者の反応は、主に両義的なものから憤慨するものまで様々であり、多くの人は、このプログラムが自分たちの特定のニーズや経験している課題に十分に対応できていないと感じている

・この論文のなかで著者は、well-beingそのもの (per se)が理想的な目標や目標であるべきだという仮定に疑問を呈している。学習者や教員は、他の目標、すなわち、幸福度に直接焦点を当てた目標ではなく、学生、resident、教員が直面している課題に直接対処するという意味でwell-beingの基盤となる目標を考えることで、より良い結果を得ることができるかもしれない。言い換えれば、目標とそれに関連した介入は、学校や仕事以外での健康的な実践を奨励することに主に焦点を当てるのではなく、学校や仕事の経験に焦点を当てることになるだろう。

・著者は、満足度 (satisfaction)というレンズを用いて、well-beingに向けた進歩を見たり評価したりすることで、3つの相互に関連した領域で満足度を高めることを提案している。(1)学校 and/or 仕事、(2)自己、(3)生活である。これらの領域に注意を払うことで、長年求められてきたが捉えどころのないwell-beingの改善を生み出す可能性が高くなるかもしれない。

A Comparative Case Study Analysis of Cultural Competence Training at 15 U.S. Medical Schools (Acad Med 2021)

Vasquez Guzman CE, Sussman AL, Kano M, Getrich CM, Williams RL. A Comparative Case Study Analysis of Cultural Competence Training at 15 U.S. Medical Schools. Acad Med. 2021 Feb 23. Epub ahead of print.

背景:米国のLiaison Committee on Medical Education (LCME) が、メディカルスクールでの文化的コンピテンス研修を義務化してから20年が経過した。この研修の実施には、カリキュラムの制約、文化的コンピテンスの解釈の違い、研修の有効性を裏付けるエビデンスなど、多くの課題が残されている。本研究では、メディカルスクールがどのようにして文化的コンピタンス研修を実施してきたかを調査した。

方法:地域的に多様性のある、米国の15個の公立・私立メディカルスクールが本研究に参加した。2012年から2014年にかけて、著者は52名の管理者、51名の教職員、22名の3年生・4年生の医学生を対象に、125件のインタビューを行い、さらに196名の医学生を対象に29件のフォーカスグループを実施した。インタビューは録音、逐語録化され、質的データ分析のためにNVivo 10ソフトウェアにインポートされた。クエリーでは、学生の多様な患者を扱うための心構え、社会文化的な問題への関与、前臨床および臨床カリキュラムの一般的な認識に関するトピックを収集した。

結果:文化的コンピテンス研修に関する3つのテーマ領域が浮かびあがった。すなわち、1. 正式なカリキュラム、2. 教育条件、3. 教育機関のコミットメントである。
正式なカリキュラムのレベルでは、大学はコミュニケーションスキル、患者中心のケア、コミュニティベースのプロジェクトに重点を置いた様々なコースを提供していた。
教育条件では、文化的コンピテンスを前臨床期間に統合し、内容を提供することへの省察を重視していた。
機関レベルでは、機関の多様性への取り組み、プログラムの開発、文化的能力の優先順位は様々であった。

結論:メディカルスクールの文化的コンピテンスへの取り組み方にはばらつきがある。参加した15校のなかでは、縦断的・実験的な学習が重要であることが明らかになり、文化的コンピテンスの内容を単に正式なカリキュラムに統合するだけでなく、それ以上のニーズがあることが浮き彫りになった。文化的コンピテンス・プログラムの効果を判断するためには、ギャップを特定して対処するためのシステマチックな評価を実施することが重要である。LCME基準は医学教育の様相を一変させたが、この訓練に対するエビデンスに基づいた効果的なアプローチを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

個人的所感:かなり大掛かりなリサーチです。管理者、教職員、医学生とかなり多様なステークホルダーをきちんとリクルートしてきているように感じました。