医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'Just pretending': Narratives of professional identity transitions in internal medicine (Med Educ 2022)

Kerins J, Smith SE, Tallentire VR. 'Just pretending': Narratives of professional identity transitions in internal medicine. Med Educ. 2022 Oct 31. Epub ahead of print.

背景:医療従事者のアイデンティティの移行は、不確実性と自己不信に満ちたダイナミックな期間である。英国の卒後研修生にとって、医師登録 (medical registrar)への移行は採用・定着の大きな障害となり得る。ナラティブ分析は、プロフェッショナル・アイデンティティを開発するための戦略に情報を提供する可能性を持つ移行期のアイデンティティ・ワークについての洞察を提供する。本研究では、ナラティブ分析を用いて、この移行期の限界段階 (liminal phase)における研修生の体験と主体性の感覚 (sense of agency)を探ることを目的とした。

方法:倫理的承認を得たうえで、内科研修2年目の研修生に面接を行った。インタビューは音声録音され、逐語的に書き起こされた後、アイデンティティの付与を拒否する例と主張する例を含む、医学登録者の役割に移行する際の限界を説明するナラティブを確認するために分析された。ナラティブ分析は、リーズマンによって記述され、ジェームス・ジーの談話の単位の影響を受けたもので、データにエージェント・レンズを適用して実施された。

結果:2021年1月から2022年2月の間に、19人のIM研修生にインタビューを行った。詳細な分析を踏まえ、医学登録者の役割を拒否する研修生と主張する研修生を含む4つの語りが合目的的に選択され、発表された。研修生は否定的な経験を語る傾向があったが、より高い主体性の感覚を持つ研修生は、語りによって肯定的な内省とアイデンティティの構築を示していた。また、研修生が医学登録医への移行段階をどのように定義しているかと、彼らの語りがどのように彼らのアイデンティティを説明しているかとの間には、しばしばアイデンティティの不一致がみられた。

結論:本研究は、限界的なアイデンティティの移行期の経験を探求するうえで、ナラティブ分析の言語的、主体的なレンズを例証するものである。この時期に研修生が経験したアイデンティティの不協和を反映し、研修生の主体性の感覚に光を当てた。これは、医療研修の移行期に経験する重要な限界性を認識し、アイデンティティ・ワークを支える主体性の感覚を高める必要性を示唆している。