医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Overextending: A Qualitative Study of Trainees Learning at the Edge of Evolving Expertise (J Grad Med Educ 2022)

Kshetrapal A, Teunissen PW, Eppich WJ. Overextending: A Qualitative Study of Trainees Learning at the Edge of Evolving Expertise. J Grad Med Educ. 2022;14:295-303.

背景:卒後医学教育の課題は、患者の安全性を確保しつつ、監督されない診療に対応できる医師を養成することである。現在のアプローチでは、自律の機会が制限されているため、医師を十分に準備できない可能性がある。研修生がどのように自律性を獲得するかに関する最近の研究から、研修生が指導医の委託の決定に積極的に影響を与えることが明らかになった。研修生がどのように自立性を高めていくのかをプログラムディレクターがより明確に理解することで、研修生が患者診療中に直面する熟考をより敏感に感じ取ることができるであろう。著者らは、臨床研修が進むにつれて、研修生がどのように監督されなくなることを経験するかを探ろうとした。

方法:構成主義的グラウンデッド・セオリーを用いて、著者らは様々な専門分野と研修レベルの研修生を電子メールで募集し、2019年から2020年にかけて17回の半構造化インタビューを行い、自律性の認識が変化した臨床経験を募った。定比較と反復分析により、主要なテーマと概念的関係を明らかにした。

結果:4つの専門科の17名の研修生が、「過剰な拡張 (overextending)」、すなわち自分の認識している進化する専門性の限界を超えることを必要とする新規の臨床状況について説明した。この行動は、研修生が意図的に行ったoverlxtendingから、外部要因によって強制的に行われたoverlxtendingまで、自覚的統制の所在に基づくスペクトルで表された。研修生が過剰な行動をとるかどうか判断する際のポイントは、(1) できるかどうか、(2) しなければならないかどうか、(3) やりたいかどうか、そして(4)安全かどうかであった。さらに上級者は、5つ目の質問として、(5) 何か見落としていることはないかを挙げた。

結論:研修生にとって、能力に関する不確実性の領域に踏み込む決断は重要であった。また、研修生が過剰な行動をとる場合、研修の必要性、能力、緊急性、患者の安全性のバランスを考慮することが必要であった。