医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

"Not yet a doctor": medical student learning experiences and development of professional identity (BMC Med Educ 2022)

Park GM, Hong AJ. "Not yet a doctor": medical student learning experiences and development of professional identity. BMC Med Educ. 2022;22:146.

背景:良い医師になるためには、正しい知識や技術を身につけることと同様に、プロフェッショナル・アイデンティティを確立することが重要である。医学部におけるプロフェッショナル・アイデンティティは、学生から医師への移行において重要な役割を果たすため、大きな関心を集めている。しかし、メディカルスクールでは膨大な量の知識と技術を習得する必要があるため、プロフェッショナル・アイデンティティを確立するための十分な機会が与えられているとは言えない。そこで、本論文では、メディカルスクールでの学習経験がこの確立にどのような影響を与えるのかについて、注意深く考察している。リサーチクエスチョンは以下の通りである。1)メディカルスクール入学後のプロフェッショナル・アイデンティティの形成過程において、医学生の医師に対する認識はどのように変化・強化されるのか? 2)医学生はメディカルスクール在学中にどのような知識を蓄積してきたか?その学習体験はプロフェッショナル・アイデンティティの形成にどのような影響を与えるのか? 3)医学生にとって医師の役割やキャリアの意味とは何か、その認識は将来の医師としての学習経験や生活にどのような理解をもたらすのか。

方法:メディカルスクール4年生の韓国人学生20名を対象に、半構造化面接を行った。学生たちの学習経験やプロフェッショナル・アイデンティティの確立について、帰納的テーマ分析によりデータを分析した。

結果:メディカルスクール入学当初、学生は自分のアイデンティティを社会から「与えられたもの」と認識していた。しかし、メディカルスクール時代の様々な学習体験が影響し、自分の認識に従って医師になることを考え、医師という職業に就くことの意味を考えるようになった。孤立した医学界と競争的な学生文化は、彼らのプロフェッショナル・アイデンティティの模索を妨げたが、患者や先輩医師など医学界以外の人々との活発な交流などの非公式な学習体験は、彼らのプロフェッショナル・アイデンティティの確立を可能にした。また、医学生は、将来どのような医師になるかを考えるなかで、個人の価値観とプロフェッショナルとしての価値観との対立を経験した。

結論:本研究で得られた知見は、医学部におけるプロフェッショナル・アイデンティティと非公式な学習経験に関する理解を深めるものである。