医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

"It's okay to not know …" a qualitative exploration of faculty approaches to working with uncertainty (BMC Med Educ 2022)

Moffett J, Armitage-Chan E, Hammond J, Kelly S, Pawlikowska T. "It's okay to not know …" a qualitative exploration of faculty approaches to working with uncertainty. BMC Med Educ. 2022;22:135.

背景:不確実性に対処する能力は、医療専門家として働くうえで不可欠な要素であると認識されているが、この領域における学生の学習を促進する方法について、明確な指針はほとんどないのが現状である。また、faculty developmentの機会が少ないことから、医療専門職の教育者は、学生が不確実性への効果的なアプローチを身につけるのを支援する能力が十分でないと感じている可能性がある。本研究の目的は、教育者が学生の不確実性の経験を理解し、学生が不確実な状況に対処するのに役立つ属性を特定するために設計されたfaculty development介入を検討することであった。

方法:この質的研究は、医療専門職教育における不確実性の本質に関わる意味を参加者が共有するよう促す構成主義的方法論的アプローチに基づくものであった。90分のFDセッションが2回行われた。これらのセッションでは、Hanらの不確実性の分類法を、フォーカスグループ内で学生の不確実性に関するシナリオのロールプレイに適用するよう、参加者に促した。フォーカス・グループのデータが収集され、演繹的および帰納的テーマ分析の2段階のハイブリッド・アプローチで検討された。

結果:Hanらの分類法は、参加者がロールプレイシナリオのなかで不確実性の複数の原因と問題を特定するのに役立ち、その結果、医療専門職の学習者が遭遇する不確実性の程度を明らかにすることができた。データ分析により、全体として、「不確実性の原因」「不確実性の問題」「不確実性の属性」「学習環境」という4つのテーマが明らかになった。また、参加者は、医療専門職の学生が不確実な状況を管理する際に役立つと考える属性についても貢献している。そのなかには、医療行為における不確実性の性質に対する認識、不確実性を認識する能力、適応性・積極性・レジリエンスといった態度の採用が含まれていた。

結論:本研究は、Hanらの不確実性の分類法をfaculty developmentの場でうまく活用したことを明らかにした。我々の発見は、この分類法が、医療専門職の教育者が学生や同僚と不確実性に関わる考察や会話を共有する際に使用できる、実用的で汎用性のあるツールであることを示唆している。