医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Social Network Analysis in Undergraduate and Postgraduate Medical Education: A Scoping Review (Acad Med 2023)

Steinert Y, Fontes K, Mortaz-Hejri S, Quaiattini A, Yousefi Nooraie R. Social Network Analysis in Undergraduate and Postgraduate Medical Education: A Scoping Review. Acad Med. 2023 Dec 28. Epub ahead of print.

背景:ソーシャルネットワーク分析(SNA)は、個人や集団間の関係を研究するために用いられる理論的枠組みであり、分析アプローチである。SNAは、対人関係の社会的構造や力学を理解するために多くの分野で用いられてきたが、医学教育における利用についてはほとんど知られていない。卒前および卒後の医学教育におけるSNAの適用範囲をマッピングし、統合することで、教育実践や研究に役立てることができる。

方法:本スコーピング・レビューは、2020年12月にMedline, Embase, Scopus, ERICで実施した検索に基づき、2022年3月に更新した。重複を除去した結果、検索戦略により5,284件の記録が得られ、そのうち153件が最初の包含基準に合致した。チームメンバーは、フル・テキスト・レビューを行い、関連データを抽出し、SNAが卒前および卒後の医学教育において理論的・分析的アプローチとしてどのように用いられてきたかを明らかにするため、記述的・主題的分析を行った。

結果:11カ国から30件の研究が抽出された。ほとんどの研究は、主にオンライン環境における卒前医学生に焦点を当て、SNAを通じた学生の友人関係、情報共有、助言の求め方について調査したものであった。レジデントやアテンディングスタッフを対象とした研究はほとんどなかった。その結果、SNAはオンラインコースやクリニカルクラークシップにおける学生の相互作用をモニターするのに有用なツールであることが示唆された。SNAはまた、社会的ネットワークが学業成績に及ぼす影響、教室外での社会的支援や非公式学習の影響、学習における同族性の役割などを検討するためにも利用できる。臨床の場では、SNAは医学研修生間のチームダイナミクスや知識交換の調査に役立つ。

結論:SNAは、卒前および卒後の医学教育では十分に活用されてこなかったが、SNAは教室や臨床の場における社会的ネットワークの構造や影響を明らかにするのに役立つことが示された。SNAは、教育経験の設計、学習のモニタリング、教育的介入の評価に役立てることもできる。医学教育におけるSNA研究の今後の方向性について述べている。