Morrison N, Machado M, Blackburn C. Bridging the gap: Understanding the barriers and facilitators to performance for Black, Asian and Minority Ethnic medical students in the United Kingdom. Med Educ. 2023 Oct 8. Epub ahead of print.
背景:医学教育における到達度格差 (differential attainment)はよく知られた現象である。教育機関や研究者は、到達度格差を調査する際に「学生不足モデル (student deficit model)」からの脱却を強く求めているにもかかわらず、黒人、アジア系、少数民族(BAME)の医学部学生の経験を理解することにはほとんど関心が払われていない。本研究は、学習の社会的構築理論に基づき、医学部環境の複数の側面が、英国全土のBAME系卒前医学生の学業成績にどのような影響を与えるかを探る初の全国的研究である。
方法:逐次説明型混合研究法を用いて、著者らは2020年から2021年にかけて英国内の医学部で調査を実施し、3つのフォーカスグループのファシリテーションを行った。参加者はBAME背景を自認していた。量的分析には、記述統計と二変量解析が含まれた。質的データはテーマ分析を用いて分析し、その後に帰納的テーマを特定した。
結果:フェーズ1の調査には362人が回答し、フェーズ2のフォーカス・グループには17人が参加した。調査およびフォーカス・グループの参加者はともに、支援的な人間関係など学習の促進要因を認識していたが、学生は、学習や成績の妨げになると感じる多くの障壁に直面していると報告した。これらの障壁には、教育資源への限られたアクセス、多様化されていないカリキュラムや医学部の集団などがあった。また、学生たちは、教育の旅を通して、さまざまな形の人種差別を経験し、また目撃したと述べた。
結論:学生たちは医学部での研修を通して、学習や成績に影響を及ぼすと思われる様々な困難に遭遇した。本研究は、BAME学生の経験について新たな洞察を提供し、先行研究を発展させるものである。また、医学部内に人種差別が蔓延していることを明らかにし、制度改革が急務であることを強調した。教育者や教育機関は、こうした障壁や促進要因を単に認識するだけでなく、積極的に革新し、適応していかなければならない。そうすることで、BAMEの学生にとって真に帰属意識を育むインクルーシブな学習環境への道が開かれるのである。