医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Deconstructing the masculinized assumption of the medical profession: narratives of Japanese physician fathers (BMC Med Educ 2023)

Kamihiro N, Taga F, Miyachi J, Matsui T, Nishigori H. Deconstructing the masculinized assumption of the medical profession: narratives of Japanese physician fathers. BMC Med Educ. 2023;23:857.

背景:医療専門職におけるジェンダー研究は、医師という職業がしばしば男性に向いているとみなされることに関連するジェンダー・バイアスを明らかにしてきた。男女平等への道は、必然的にこの男性化された思い込みを解体することを伴う。日本では、育児に積極的に参加するイクメンが男女平等への変革に貢献するという期待が数十年にわたって持たれてきたにもかかわらず、日本社会はいまだに男性優位であり、女性は大きなジェンダー格差に苦しんでいる。caregiverであることと医師であることに関する暗黙のジェンダー的前提を探る目的で、著者らは専門職とcaregiverという二元的役割を両立する個人の経験に焦点を当てた。

方法:著者らはsubjectivist inductive researchを実施し、10人の日本人医師の父親を合目的的サンプリングによって募集し、2017年10月から2018年12月にかけて1対1の半構造化面接によってデータを収集した。著者らはナラティブデータを録音・書き起こし、テーマと代表的なナラティブを抽出した。

結果:本研究では、ジェンダーギャップの再生産と変化の可能性について、以下の3つのテーマを同定した:葛藤を経験せずに医療職のジェンダー化された前提を維持すること、葛藤を経験しながら医療職のジェンダー化された前提を維持すること、葛藤を通して医療職のジェンダー化された前提を脱構築すること。著者らは、これらの交渉が、男性医師とその妻との間のジェンダー化された役割分担や家父長制的な家族構造と相互に作用していることを発見した。

結論:本研究は、男性医師が父親になったときの交渉の過程で、ジェンダー化された医療職の前提、ジェンダーステレオタイプジェンダー化された家事分業がどのように再生産されたかを明らかにした。男性医師が無意識のジェンダー・バイアスを問い直すためには、男性がジェンダーステレオタイプに関する知識を得ることが重要であり、教育者がそのような機会を作ることを提案している。さらに著者らは、男性化された前提がいかに医師であることの観念と暗黙のうちに相互作用しているかについての医師の認識を高めることが、医療専門家の間でほとんど議論されていない側面であるが、医療分野におけるジェンダー化された規範性を脱構築するために極めて重要であると主張している。