医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'I was uncertain, but I was acting on it': A longitudinal qualitative study of medical students' responses to uncertainty (Med Educ 2023)

Stephens GC, Sarkar M, Lazarus MD. 'I was uncertain, but I was acting on it': A longitudinal qualitative study of medical students' responses to uncertainty. Med Educ. 2023 Nov 14. Epub ahead of print.

背景:不確実性 (uncertainty)は医療現場においていたるところに存在する。従って、個人が不確実性にどのように対応するかは、不確実性耐性 (uncertainty tolerance; UT)と呼ばれ、医学部卒業生のコンピテンシーとみなされるようになってきている。それにもかかわらず、UT概念の側面については議論があり、これは学生の経験を理解することよりも、UTを測定することに焦点を当てた研究に関連している可能性がある。そこで我々は、(1) 医学生は不確実性への対応をどのように記述するのか、(2) 記述された対応は(もしあるとすれば)経時的にどのように変化するのか、(3) 記述された対応はUT概念の理解にどのように寄与するのか、について検討した。

方法:解釈主義的世界観に基づき、オーストラリアのメディカルスクールに在籍する臨床医学生41名を対象に、2020年を通して縦断的質的研究を実施した。参加者は、学期内の6つの時点(n = 41, 40, 39, 38, 37, 35)で振り返り日記を記入し、両学期末に半構造化面接を行った(各学期n=20)。フレームワーク分析を用いてデータを分析した。

結果:参加者は医療の不確実性を受け入れていたが、不確実性に対する認知的評価は、脅威的なもの(信頼性への挑戦など)から日和見的なもの(学習や成長のためなど)まで様々であった。不確実性に反応する感情は、心配や不安など否定的な表現が優勢であった。参加者は、不確実性を回避したり積極的に関与したりするなど、様々な不適応的・適応的な行動反応を記述した。時系列的に典型的な否定的感情を記述しているにもかかわらず、参加者の認知的・行動的反応の記述は、自信喪失や回避から、不確実性を受け入れ、不確実性にもかかわらず関与する方向に変化していた。

結論:不確実性への反応に関する学生の記述から、既存のUTの概念化は、不確実性に"tolerant"であることの意味に関する医学生の経験を総合的に反映していない可能性が示唆された。特に、不確実性を最終的にどのように管理するかよりも、感情(ストレスなど)を中心とした"tolerance"の概念化に関するものであった。本研究を発展させれば、不確実性「耐性」の特徴を再定義し、「耐性」の重要な指標として感情的反応ではなく、適応的な認知的・行動的反応に焦点を当てることを検討することも可能であろう。