医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Exploring adaptive expertise in residency: the (missed) opportunity of uncertainty (Adv Health Sci Educ Theory Pract 2023)

Gamborg ML, Mylopoulos M, Mehlsen M, Paltved C, Musaeus P. Exploring adaptive expertise in residency: the (missed) opportunity of uncertainty. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2023 Jul 1. Epub ahead of print.

背景:医療における未知の臨床的将来に向けて新米医師を準備することは困難である。このことは、適応的専門知識 (adaptive expertise)という枠組みが支持されている救急部(EDs)において特に当てはまる。新卒の医師が救急外来での研修を開始する際には、適応的専門家になるための支援が必要である。しかし、レジデントがこの適応的専門性を身につけるためにどのような支援ができるのかについては、ほとんど知られていない。

方法:本研究は、デンマークの2つのEDsで実施された認知的エスノグラフィ研究 (cognitive ethnographic study)である。データは、32人の老年患者を診療する27人のレジデントを80時間観察したものである。この認知的エスノグラフィ研究の目的は、EDで老年患者を治療する際に、レジデントがどのように適応的実践に取り組むかを媒介する文脈的要因を記述することであった。

結果:すべてのレジデントが適応的実践と日常的実践の両方に流動的に関与していたが、不確実性 (uncertainty)に直面して適応的実践に関与する際には困難が伴うことが示された。不確実性は、レジデントのワークフローが中断されたときにしばしば観察された。さらに、レジデントがプロフェッショナル・アイデンティティをどのように解釈しているか、そしてそれが日常的実践と適応的実践の間を移行する能力にどのように影響しているかが浮き彫りになった。レジデントは、自分たちは経験豊富な同僚医師と同等のパフォーマンスを期待されていると考えていると報告した。このことは、不確実性を許容する能力に悪影響を及ぼし、適応的実践の妨げとなった。

結論:臨床の不確実性を臨床業務の前提に合わせることは、研修医が適応的専門性を身につけるために不可欠である。