医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Productive struggle and failing safely: implications for developing adaptive expertise in communication (Adv Health Sci Educ Theory Pract 2022)

Lynch J, Orsino A, Kawamura A. Productive struggle and failing safely: implications for developing adaptive expertise in communication. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2022 Nov 5. Epub ahead of print.

背景:難しい会話は、柔軟で適応力のあるアプローチを必要とする複雑なタスクである。このスキルを身につけるレジデントは、最初は苦労したり、失敗したり、サポートを必要とするかもしれない。しかし、この経験は、適応的専門性 (adaptive expertise)に不可欠な将来の学習への準備となる可能性がある。しかし、レジデントが職場で失敗からどのように学ぶかについての理解は限られており、その潜在的な利点を最大限に生かすことはできない。本研究の目的は、職場学習において困難な会話を乗り越えるための学習において、失敗が果たす役割を探ることであった。

方法:2017年から2018年にかけて、発達小児科の医師13名(サブスペシャリティレジデントと新卒医師)を対象に、半構造化面接を用いた構成主義的グラウンデッドセオリー研究を行った。筆者らは定比較分析を用いて、テーマを反復的に特定した。テーマの特定は、適応的専門性の概念的枠組みを用いて帰納的および演繹的に行った。

結果:困難な会話を主体的にリードすることで、医師は、これらの出会いで起こった失敗が、より深い概念的理解につながる新しい知識の生成を促し、適応的専門性の開発をサポートすることを認識することができた。しかし、参加者は、スタッフ医師がレジデントを困難な会話から守ることが多いため、レジデントがフィードバックを受け、学習に参加する機会が制限されていると指摘した。

結論:レジデントは、既存の知識を超えて挑戦するような難しい会話に参加する。指導医のサポートを受けながら、患者や家族との難しい会話をリードする機会を与えることで、レジデントが苦労しながら学ぶことができ、それがより深い概念の理解につながり、適応的な専門性の発達をサポートすることになる。