医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

A gender biased hidden curriculum of clinical vignettes in undergraduate medical training (Patient Educ Couns 2023)

Arsever S, Broers B, Cerutti B, Wiesner J, Dao MD. A gender biased hidden curriculum of clinical vignettes in undergraduate medical training. Patient Educ Couns. 2023;116:107934.

背景:医学教育では臨床ヴィネットが多用されているが、臨床ヴィネットがどのような隠れたカリキュラムを伝えるかについては、ほとんど注目されていない。本研究では、卒前医学教育で使用される臨床ヴィネットジェンダーステレオタイプジェンダー・バイアスを伝えているかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法:ジュネーブ医学部で卒前教育と評価に使用されている臨床ヴィネットに現在存在するジェンダー関連の特徴について、量的・質的混合分析を行った。

結果:2359のヴィネットが同定され、そのうち955が包含基準を満たした。患者の職業と家族介護者の役割は、男性医師と女性看護師が標準である医療専門職と同様に、強く性別化された分布を示した。質的な結果からは、広くステレオタイプ化された性別役割と性別表現が確認された。

結論:本研究により、ジュネーブの卒前医学教育で教育・評価教材に使用されている臨床ヴィネットは、ジェンダーに偏った隠れたカリキュラムを伝えており、患者ケアに悪影響を及ぼし、男女の機会均等を損なう可能性があることが明らかになった。
卒前医学教育で使用される臨床ヴィネットの内容と形式を、ジェンダーレンズを用いて積極的に見直す必要がある。本研究から得られたジェンダーに中立的あるいはジェンダー変換的な稀な事例に基づき、ジェンダーに偏らないヴィネットを書くためのガイドラインを提案する。