医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

COVID As a Catalyst: A Qualitative Study Of Professional Identity Formation among U.S. Medical Students During COVID-19 (Teach Learn Med 2023)

Henderson RR, Adams CA, Thomas L, Gundersen E, Zaidi Z, Hagen M. COVID As a Catalyst: A Qualitative Study Of Professional Identity Formation among U.S. Medical Students During COVID-19. Teach Learn Med. 2023 Aug 17:1-12. Epub ahead of print.

背景:学生は医学知識の習得だけでなく、Professional Identity Formation(PIF)の過程を経て医師になる。本研究では、Jarvis-Selingerらの概念的枠組みを用いて、公衆衛生上の大きな危機であるCOVIDがわが国の前臨床医学生のPIFに与える影響を検討した。

方法:米国の2つのメディカルスクールにおいて、2020-2021年のCOVIDパンデミック時に1年生から2年生に進級する28人の医学生に2回インタビューを行い、COVID-19がPIFに及ぼす影響を調査した。文字起こしされたインタビューをコード化し、構成主義的テーマ分析を用いてテーマを特定した。

結果:以下の3つのテーマを同定した。1)メンタルヘルスウェルネスへの影響、2)COVID時の医療従事者としてのアイデンティティの確立、3)社会における医師の役割への疑問。日常生活やサポートシステムが崩壊し、ウェルネスや職業上の選択に対する自信が損なわれた。学生は、公衆衛生の模範となる必要性を指摘し、COVIDは誇りの感情を促すと同時に、医療の新たな政治化のなかで自己犠牲への期待に疑問を抱かせた。学生は、医師は公衆衛生と政治的コミュニケーションにますます従事しなければならないと感じた。

結論:我々の知見は、公衆衛生危機の際にPIFを支援する足場を構築しようとする医学教育者に役立つものであり、PIFにおける時事問題や政治の重要性を浮き彫りにするものである。我々の提言には、学生支援、縦断的な指導、社会政治的要因がPIFに与える影響について議論するカリキュラムの場の必要性、社会的・政治的背景を考慮したプロフェッショナリズムなどの基礎概念の再検討などが含まれる。我々の知見は、COVIDパンデミック時のPIFについての理解を深めるだけでなく、将来の公衆衛生危機時の教育と学習にも関連するものである。