医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Researching models of innovation and adoption in health professions education (Med Educ 2023)

Pusic MV, Ellaway RH. Researching models of innovation and adoption in health professions education. Med Educ. 2023 Jul 26. Epub ahead of print.

背景:保健医療専門職教育(HPE)には常に変化とイノベーションが存在するにもかかわらず、そのような変化、変化の経験、変化に伴うイデオロギー、変化の予期せぬ結果に関する理論的モデル化は比較的少ない。本稿では、変化に関するより広範な理論的状況をマッピングする方法として、HPEにおけるイノベーションの採用に対する理論的アプローチを探求する。

方法:技術採用とシステム変革に関心を持つHPEの研究者である著者らは、新しいアイデアや手法の導入に対してコミュニティや個人がどのように反応するかに関する一連の思考実験に基づき、文献のナラティブ・レビューを行う。この研究では、新しいアイディアの出現や宣伝から、初期採用者の具体的な経験まで、イノベーション採用の段階を調査している。

結果:イノベーションが初めて登場したとき、潜在的な採用者に知らせるための具体的な情報がほとんどないことが多く、肯定的にも否定的にも誇大宣伝の影響を受けやすい。これは、重要な注意点はあるものの、ガートナーのハイプ・サイクル・モデル (Gartner Hype Cycle model)を使って説明することができる。ひとたびイノベーションの採用が始まれば、初期採用者のユーザー体験が、その後に続くユーザー体験に情報を与えることができる。これは、ロジャースのイノベーションの普及モデル (Rogers' diffusion of innovation model)を用いて説明することができるが、これにも注意点がある。特筆すべきは、どちらのモデルも、1回限りの、イエス/ノーの個人採用という点を超えていないことである。個人による取り込みと維持を長期にわたって追跡するには、学習曲線理論のような他のアプローチが必要である。

結論:このように拡大された理論的基盤は、まだやや道具論的ではあるが、補完的な理論的観点と組み合わせることで、ばらつき、ボランティア精神、変化への抵抗の理由をよりよく探求する機会を与えることができる。まとめると、変化は複雑で微妙なものであり、HPEにおける変化を理解し、有意義に取り組むためには、より優れたモデルと理論が必要である。そのために、著者らは、変化に関するより豊かで思慮深い研究と学術的思考、そしてHPE全体における変化の追求に対するよりニュアンスに富んだアプローチを奨励することを目指している。