医学教育研究者・総合診療医のブログ

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The impacts of altruism levels on the job preferences of medical students: a cross-sectional study in China (BMC Med Educ 2023)

Zhang Y, Lin X, Li X, Han Y. The impacts of altruism levels on the job preferences of medical students: a cross-sectional study in China. BMC Med Educ. 2023;23:538.

背景:保健医療人材の合理的配分は、公共の福祉と保健医療サービスへの公平なアクセスを確保するために極めて重要である。医学生の職業嗜好を理解することは、保健医療人材の確保と維持のための効果的な戦略の開発に役立つ可能性がある。ほとんどの研究は、離散選択実験(discrete choice experiments; DCE)を通じて、外発的インセンティブと職業選択の関係を探っている。内発的利他主義(intrinsic altruism)が職業選択に及ぼす影響については、ほとんど注目されていない。本研究は、外発的な職務属性に関して、利他主義のレベルが異なる医学生の異質な選好を探ることを目的とした。

方法:2021年7月から9月にかけて、北京の6病院の医学生925人を対象にオンライン調査を実施した。調査は、DCEsによる職務選択シナリオと、医学的意思決定行動に関する実験室実験のシミュレーションを組み合わせた。行動データは、効用関数に基づく利他的パラメータを推定することにより、利他主義レベルを定量化するために使用した。混合ロジットモデルを当てはめ、利他性が職務選好に及ぼす影響を推定した。

結果:すべての属性水準が仕事選好に期待された効果を示し、中でも月収(重要度ウェイトは30.46%、95%信頼区間29.25%~31.67%)と勤務地(重要度ウェイトは22.39%、95%信頼区間21.14%~23.64%)が最も顕著な要因であった。利他的パラメータの平均値は0.84(s.d.0.19)であり、医学生の利他性は概して高いことが示された。サブグループ分析の結果、利他主義レベルが高い人ほど、優れた職場環境、十分な研修やキャリア開発の機会、軽い仕事量といった非金銭的インセンティブをより好むことが示された。利他主義のレベルが低い人による地方勤務の選択率の変化は、金銭的インセンティブの変化に敏感である。

結論:医学生利他主義は概して高く、利他主義の高い者は非金銭的インセンティブにより注意を払った。このことから、政策立案者や病院管理者は、採用・定着のための介入策を立案する際に、適切な経済的インセンティブに加えて、利他的な医師のモチベーションをより高めるための非金銭的インセンティブにもさらに注目すべきであることが示唆される。医学部管理者は、医学教育における利他的価値観の促進を重要視することができるであろう。