医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The liminal landscape of mentoring-Stories of physicians becoming mentors (Med Educ 2023)

Valestrand EA, Hokstad LM, Schei E, Ofstad EH, Stenfors T, Kvernenes M. The liminal landscape of mentoring-Stories of physicians becoming mentors. Med Educ. 2023 May 14. Epub ahead of print.

背景:本研究は、医学生のメンターとなり、またメンターでありながらリミナリティ (liminality)を交渉する医師の語りを探求するものである。リミナリティとは、学習軌道の不安定な段階であり、ある理解を置き去りにしたまま、新たな洞察や立場に到達していない状態である。

方法:本研究では、ノルウェーの2校とカナダの1校のメディカルスクールにおけるグループベースの指導プログラムに参加した22人の医師メンターの半構造的インタビューを分析した。対話形式のナラティブ分析では、感化のレンズとしてリミナリティを適用し、情報提供者のメンターになるまでのストーリーに焦点を当てた。

結果:メンターとして成長するうえで、リミナリティは避けられない側面である。メンターが限界に直面したとき、どのような戦略をとるかは、その物語の一貫性に影響される。あるメンターは、リミナリティに直面したとき、メンターとして学び、成長する可能性を楽しみ、成功する。また、メンタリングや医療人文科学を医学の周辺分野とみなし、メンターと医師のアイデンティティを統合することに苦慮する人もいる。また、複数のアイデンティティの間を行き来することで、自分自身に矛盾が生じ、その結果、リミナリティがもたらす学習の可能性を拒否してしまうこともある。

結論:医師とメンターのアイデンティティが統合された指導者は、リミナリティを受け入れ、指導者として成長することができる。しかし、自分のアイデンティティの間で矛盾した対話をするメンターは、リミナリティが自分自身の理解を困難にし、メンターになる際に不快感、混乱、不十分さを経験させるならば、リミナリティを避けるかもしれない。臨床文化からメンターの役割をサポートすることは、これらの医師が臨床家とメンターのアイデンティティを調和させる内的対話を発展させるのに役立つだろう。