医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

I am an Educator: Investigating Professional Identity Formation using Social Cognitive Career Theory (Teach Learn Med 2021)

Byram JN, Robertson KA, Dilly CK. I am an Educator: Investigating Professional Identity Formation using Social Cognitive Career Theory. Teach Learn Med. 2021 Aug 17:1-13. Epub ahead of print.

背景:臨床教育者 (Clinician-educator; CE)は、academic medicineにおいて独自の役割を果たす医師であり、患者のケアに加えて、教育、カリキュラム設計、教育奨学金の創設を通じて将来の医師を育成する責任を負っている。教育者としての強いアイデンティティを持つことは、キャリアの満足度を高め、academic medicineに留まる可能性を高めることにつながる。しかし、教育者としてのアイデンティティがどのように形成されるのか、特に臨床家や研究者として成長しなければならないという相反するプレッシャーがある研修環境においては、ほとんどわかっていない。本研究では、教育者になることに関心のあるレジデントやフェローを対象に、プロフェッショナル・アイデンティティ形成を探ることを目的とした。

方法:本研究では、Clinician-Educator Training Pathwayに参加しているレジデントおよびフェローのプロフェッショナル・アイデンティティ形成について、縦断的な質的アプローチを用いて調査した。縦断的な性質を利用して、プログラムのどの側面や経験が、CEとしてのプロフェッショナル・アイデンティティ形成の障壁または促進要因として作用するかを時間的に調査した。本研究では、社会認知キャリア理論 (social cognitive career theory; SCCT)のキャリア選択モデルを用いて、自己効力感の信念、結果の期待、目標の3つの変数に加えて、文脈の影響を考慮した。

結果:参加者は、教育者としての自己効力感を高めるという共通の目標を持っていることがわかった。参加者は、学習者へのフィードバック、カリキュラムの開発、教育研究の収集・実施など、公式・非公式の指導や教育者としての行動をより意図的に行うように行動し、それらは全て教育者としての自己効力感を高めた。プログラム開始当初、参加者はCEになるための役割や道筋がはっきりしていなかった。CEのコミュニティに参加することで、道筋が明確になり、可能性のある自分としてのロールモデルが提示された。また、本研究では、参加者が教育者になるための目標と行動を媒介する、個人的な要因、キャリアの機会、昇進の可能性などの文脈的な影響を明らかにした。

結論:本研究は、SCCTキャリア選択モデルが、将来の教育者のプロフェッショナル・アイデンティティ形成を理解するための優れたフレームワークであることを示している。本研究の参加者は、教育者になるという目標に向かって、自己効力感を高め、結果の期待を形成し、目標を設定し、具体的な行動をとった。参加者は、様々なロールモデルの属性を自分の可能性として試し、それらが自分のキャリアにどのように効果的であるかを確認した。臨床家と教育者としての期待、キャリア目標、自己効力感を振り返ることは、CEとしてのアイデンティティ形成の助けとなり、CEトレーニングプログラムを設計する側にとっても、参加者のアイデンティティ形成をよりよくサポートする助けとなるだろう。