医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Why might medical student empathy change throughout medical school? a systematic review and thematic synthesis of qualitative studies (BMC Med Educ 2023)

Howick J, Dudko M, Feng SN, Ahmed AA, Alluri N, Nockels K, Winter R, Holland R. Why might medical student empathy change throughout medical school? a systematic review and thematic synthesis of qualitative studies. BMC Med Educ. 2023;23:270.

背景:医学生の共感は、メディカルスクール在学中に低下することが複数の研究で示唆されている。しかし、なぜ共感が低下するのかについて、エビデンスを統合した研究はない。本研究の目的は、メディカルスクール在学中に学生の共感が変化する理由を調査した質的研究のシステマティックレビュー・テーマ統合を実施することである。

方法:メディカルスクール在学中に共感が変化する理由を調査したあらゆる質的研究を対象とした。Medline、Scopus、CINAHL、ERIC、APA PsycInfoの各データベースから関連研究を検索した。すべてのデータベースは、その開始時点から2022年7月18日まで検索した。また、含まれる研究の参考文献リストを検索し、追加の研究を特定するために専門家に連絡した。Joanna Briggs Instituteのツールを用いて、含まれる研究の偏りのリスクを評価した。結果の全体的な信頼性は、Confidence in the Evidence from Reviews of Qualitative research(CERQual)アプローチを用いて評価した。我々は、テーマ別手法を使用して、調査結果を統合した。

結果:検索した結果、2523件の記録が得られ、合計771人の学生を含む16件の研究が分析の対象となった。ほとんどの研究(n = 11)は、ヨーロッパまたは北アメリカからのものであった。各研究において、記述的なテーマとサブテーマが特定された。患者とその疾患の複雑性が増し、「隠れたカリキュラム」(ストレスの多い仕事量、生物医学的知識の優先順位、(時には)貧しいロールモデルを含む)が、皮肉や脱感作といった学生の適応につながった。学生のそれまでの生活やプロフェッショナルとしての経験が、共感の低下を悪化させるようであった。しかし、対象となった研究の多くには、偏りが懸念された。

結論:対象となった研究の多くは小規模であり、参加者の人口統計データを含まないものもあった。患者やpractitionersに共感的なケアを提供することが有益であると考えられることから、医学教育への介入は、医学生の共感の低下を緩和する「共感的隠れカリキュラム」の開発に焦点を当てるべきである。