医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Medical school curriculum in the digital age: perspectives of clinical educators and teachers (BMC Med Educ 2022)

Zainal H, Xin X, Thumboo J, Fong KY. Medical school curriculum in the digital age: perspectives of clinical educators and teachers. BMC Med Educ. 2022;22:428.

背景:医療のデジタル化が進むなか、シンガポールのメディカルスクールカリキュラムを再検討する必要がある。シンガポールのデジタル競争力にもかかわらず、デジタル時代に向けた医学生の準備にはギャップがあると認識されている。さらに、アジアのメディカルスクールにおいて、将来の臨床実践に備えるために、デジタル技術の利用スキルをどの程度教えるべきかを評価した研究は限られており、本研究はそのギャップを埋めるものである。本研究では、シンガポールを事例として、医学生にデジタル技術のスキルを教える必要性について、現地の臨床教育者や教員の意見を調査している。また、これらのテクノロジーに対する臨床医の懸念と臨床実践に必要なデジタルコンピテンシーとのバランスをとるための方法について提言する。

方法:シンガポールの公立・私立の医療機関に勤務する臨床教育者・教員33名との個別インタビューから得られた知見である。彼らは、合目的的サンプリングで募集された。データは質的なテーマ分析によって解釈された。

結果:参加者には、シンガポールの3つのメディカルスクールすべての教育担当副学部長や、さまざまな分野の上級コンサルタントが含まれていた。全体として、デジタル技術のスキルを学生に身につけさせることは、イノベーション文化の促進や仕事の効率化という2つのメリットがあることを認めていた。しかし、これらのスキルを身につけることによる4つの主な懸念も浮き彫りにされた。すなわち、(i) 基本的な臨床スキルの低下、(ii) 患者の全体的な管理、多職種での協力、各専門分野での幅広い実践を特徴とする医療へのジェネラリスト的アプローチの軽視、 (iii) 技術進歩の急速なペース、および (iv) 技術による非人間的な対応、である。

結論:今回の知見から、シンガポール医学生は、中核的な臨床スキルと並行してデジタル技術の利用を教えるカリキュラムが有益であることが示された。