医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Communication skills learning through role models in Nepal; what are medical students really learning? A qualitative study (BMC Med Educ 2021)

Douglas AH, Acharya SP, Allery LA. Communication skills learning through role models in Nepal; what are medical students really learning? A qualitative study. BMC Med Educ. 20210;21:625.

背景:コミュニケーションスキル(CS)は重要であり、教えることも可能であるが、アジアの多くのメディカルスクールのカリキュラムにはCSが組みこまれていない。ネパールのパタン・アカデミー・オブ・ヘルス・サイエンス (PAHS)は、その目的とカリキュラムのなかにCSを位置づけている。CSはメディカルスクール入学時から教えられ、前臨床学習(最初の2年間)を通して再度強調される。臨床の授業ではCSを明確に教えることはないが、実習では観察を通して学ぶことができる。これらの「ロールモデリング (role-modelling)」相互作用は、CSの学習と発達の一部を形成している。

方法:本研究は、PAHSにおけるCS学習について、参加者の体験を通して質的に評価するものである。合目的的サンプリングにより、2年目、4年目、インターン学年の医学生20名を対象とした。データは、試験的なスケジュールを用いて、音声録音された半構造化インタビューによって収集された。記録は手作業でコード化され、テーマ分析された。コードは、テーマとサブテーマに整理された。本論文では、ロールモデリングに関連するテーマについて述べる。

結果:参加者の大半は、CS学習におけるロールモデリングについて、ポジティブな出来事とネガティブな出来事の両方を語り、それらは「ポジティブな経験とネガティブな経験」のテーマに反映されていた。ポジティブな経験では、個人の資質とインスピレーションというサブテーマが浮上し、ロールモデルのように真似をしたい、またはなりたいという学生の願望が記述された。学習者は、主にネガティブな体験を報告しており、インターンはそのような体験ばかりを報告していた。その結果、「良い医者だが...」「矛盾したメッセージ」「どのように行動してはいけないか」「専門家らしくない行動」「感情-情緒的苦痛」というサブテーマが浮かびあがった。学習者は、明示的なCSの教えと矛盾する行動を観察することで、矛盾したメッセージを受け取っていた。多くの学習者は、このような出来事から「どのように行動してはいけないか」を学んだと認識していたが、何人かは苦痛を感じたと述べていた。

結論:ロールモデリングは強力かつ重要なCS学習ツールであり、明示的なCS教育をポジティブに強化するものともネガティブに矛盾するものともみなされている。ネガティブなモデリングは、ポジティブな学習の可能性があるにもかかわらず、学習者の間に内的葛藤、混乱、苦痛を生じさせるものであった。ネガティブなロールモデリングの世界的な問題は、ネパールでも広まっている。医学教育者は、明示的なカリキュラムが暗黙的な学習と整合していることを確認する必要がある。臨床指導者は、自分たちが強力なロールモデルであることを認識し、意図的なモデル化のスキルを身につけるようサポートする必要がある。学習者が自分の経験を振り返り、観察結果を批判的に評価し、ロールモデルとなった行動や態度を意識的に採用したり拒否したりできるようにする必要がある。