医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

A scoping review: virtual patients for communication skills in medical undergraduates (BMC Med Educ 2022)

Kelly S, Smyth E, Murphy P, Pawlikowska T. A scoping review: virtual patients for communication skills in medical undergraduates. BMC Med Educ. 2022;22:429.

背景:コミュニケーションは医学生にとって必須の能力である。近年、コンピュータを用いた教育ツールであるVirtual Patient(VP)の利用が進んでいる。しかし、医学生のコミュニケーション能力育成を支援するためのエビデンスに基づく実践的なガイダンスは不明である。我々は、患者へのアクセスが制限されている現在の環境において、特に重要な学生の学習におけるVPのアフォーダンスに焦点を当て、このスコーピングレビューを行った。

方法:本スコーピングレビューは、Arksey & O'Malleyの方法論に従った。6つのデータベースから検索を行い、5,262件の引用を得た。2人の査読者が独立してタイトル、全文(n = 158)をスクリーニングし、最終的に含まれる55の論文についてデータ抽出を行った。教育的アフォーダンスの考察を支援するために、著者らは実用的な枠組み(活動理論から派生)を用いて、VPの構造、カリキュラムの調整、VP活動の仲介、社会文化的文脈について、収録された研究をマッピングした。

結果:VP自体だけでなく、その文脈や関連するカリキュラムの活動も成果に影響を与えることが示唆された。VPは、1回限りの介入として試行された論文が最も多く(19件)、平均時間は44.9分(範囲10-120分)、主に上級医学生(n = 23)を対象とし、特にカリキュラムに明確に組み込まれたVP活動がない研究が最も多かった(47%)。繰り返し練習は比較的少なく、フィードバックや自己省察、評価も低レベルであった。学生はVPを全体的に評価しており、信頼性と使いやすさを重要な特徴として挙げている。しかし、リソースに関する説明は省略されることが多く、コスト計算を行うことで、VPが持つ意味をより完全に理解することができるだろう。

結論:VPは、時間的な制約を受けず、カリキュラムに沿った形で繰り返し練習することで、その可能性を最大限に引き出すことができる。また,反省と習得を可能にするフィードバックの提供も重要である。著者らは、コンピュータによる真正性とカリキュラムに組み込まれた教育デザインのバランスを明確にすることを教育者に推奨している。