医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Implementing a Social Determinants of Health Curriculum in Undergraduate Medical Education: A Qualitative Analysis of Faculty Experience (Acad Med 2022)

Bann M, Larimore S, Wheeler J, Olsen LD. Implementing a Social Determinants of Health Curriculum in Undergraduate Medical Education: A Qualitative Analysis of Faculty Experience. Acad Med. 2022 Jul 5. Epub ahead of print.

背景:健康の根本的な要因に対する医療専門家の概念が変化したことを受け、メディカルスクールでは健康格差や医療の社会的背景に関するカリキュラムを卒前教育に取り入れることが求められている。これまでの研究では、これらのカリキュラムにおける学生の経験や成果に焦点が当てられてきたが、関係するphysician-facultyの経験にはあまり注意が払われてこなかった。本研究は、このカリキュラム改革を実施する際の課題と機会に関する理解を深めるために、教員の洞察を得ることを目的とした。

方法:2019年春に米国のあるメディカルスクールの教員10名に対して、健康の社会的決定要因および健康格差に関連する新しいカリキュラムを設計し、教える経験を把握するために、半構造化詳細インタビューを実施した。インタビューガイドの作成を含む研究デザインは、カリキュラムの実施に対する批判的教育学の視点と社会構築主義的アプローチによってもたらされた。構成主義的グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い、オープン・コーディング、テーマ・コーディング、アキシャル・コーディングの手法でインタビュー記録を分析した。主要なテーマは、専門的、組織的、相互作用的、または個人的なものに分類され、最終的なモデルへと整理された。

結果:参加者は、専門的、組織的、相互作用的、個人的という4つの同心円的なレベルで自分の経験を処理した。教員は、健康アウトカムの推進要因として社会的文脈の議論をより多く取り入れる動きを概ね受け入れていた。しかし、彼らは、コンテンツを開発し提供する際に、自分たちのトレーニングの欠点や学校内の構造的制約を克服することに苦労していた。これらの制約に直面したとき、教員は教室で予期せぬ緊張を経験し、自己反省と教育アプローチの再構築を促した。

結論:本研究の結果は、卒前医学教育に健康の社会的決定要因とそれに関連するカリキュラムを取り入れる際に教員が直面する課題を浮き彫りにしている。また、関連する専門知識をより広範に概念化する必要性、およびメディカルスクールにおける医学教育者の選抜、訓練、支援方法についても示唆を与えている。