医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The influence of candidates' physical attributes on assessors' ratings in clinical practice (Med Teach 2021)

Sam AH, Reid MD, Thakerar V, Gurnell M, Westacott R, Yeates P, Reed MWR, Brown CA. The influence of candidates' physical attributes on assessors' ratings in clinical practice. Med Teach. 2021 Feb 11:1-6. doi: 10.1080/0142159X.2021.1877268. Epub ahead of print. PMID: 33569973.

背景:職場における医師の能力の評価は一般的であり、しばしばhigh-stakesな評価に貢献している。既存の研究では、評価者の判断が候補者の身体的属性に影響されうることが示唆されている。我々は、模擬候補者のスコアが、タトゥー、髪の色、地域のアクセントに基づく評価者のバイアスに影響されるかどうかを調査した。

方法:我々は、実験的、ビデオベース、単盲検、ランダム化、インターネットベースのデザインを使用した。4つの異なる能力基準で、模擬internの臨床検査のパフォーマンスのビデオを作成した。4つのビデオはまた、ステレオタイプ属性(CPX)、紫の髪(CPH)、タトゥー(CPT)、リバプール英語訛り(CPA)のいずれも持たない、「クリアパス」基準での模擬臨床研修医の演技を収録したものであった。評価者は、属性なしの「クリアパス」候補者と属性ありの「クリアパス」候補者のうちの1人を含む5つのビデオを見るようにランダムに割り付けられ、各候補者について総合的なグローバル評点をつけるように求められた。クリアパス候補者の総合評点を属性ありと属性なしで比較した。

結果:98人の評価者が分析に含まれた。ステレオタイプ属性を持つ候補者の合計スコアは、属性のない候補者よりも有意に低くはなかった。評価者は、すべての候補者の総合評点の間で中程度の一致を示した。ステレオタイプ属性を持つ受験者の総合評点は、ステレオタイプの属性を持たない受験者に比べて有意に低くはなかった。

結論:タトゥー、紫の髪、または地域的なアクセントの存在は、観察された臨床検査シナリオにおいて、評価者が受験者に与える評点またはスコアに系統的に悪影響を及ぼすことはなかった。

A thematic network for factors affecting the choice of specialty education by medical students: a scoping study in low-and middle-income countries (BMC Med Educ 2021)

Sarikhani Y, Ghahramani S, Bayati M, Lotfi F, Bastani P. A thematic network for factors affecting the choice of specialty education by medical students: a scoping study in low-and middle-income countries. BMC Med Educ. 2021;21:99.

背景:医療専門分野の選択は、医療システムのパフォーマンス、コミュニティの健康、医師の生活に影響を与えうる複雑な現象である。エビデンスに基づいた政策立案のためには、専門の選択に影響を与える主要な要因を特定することが不可欠である。
・本研究では、低・中所得国 (LMICs)の医学生 (MS)が専門分野を選択する際に影響を与える要因に関するエビデンスの包括的なマップを提供し、知識のギャップを明らかにすることを目的としている。

方法:2000年1月から2020年5月までの間に、6つのオンラインデータベースを対象にシステマチックな検索を行った。検索には、Arksey and O'Malleyが提唱した5段階のscoping review methodを用いた。また、量的なテーマ分析法を用いてデータを統合した。次に、概念についてより理解するために、概念マップとしてのテーマネットワーク (thematic network)を作成した。

結果:分析の結果、以下の5つの主要なテーマが導かれた。すなわち、1. 個人的な決定要因、2. 人生の充実感、3. 影響力のあるキャリア、4, 教育的決定要因、5. 対人関係の影響である。さらに、最も多かったサブテーマは、特定の個人的要因、コントロール可能なライフスタイル、労働生活の質、将来の労働条件であった。

結論:本レビューは、専門分野の選択に影響を与える要因についてのエビデンスを提供した。より正確なエビデンスで医師の労働力政策を支えるためには、各国の社会経済的文脈に基づいて、これらの要因の重みづけや順位を探索する必要がある。また、倫理的価値観、医療哲学の様々な側面、移民の傾向などの要因が今後の調査対象となることが示された。

"I just stand around and look friendly" - Comparing medical students' and physicians' ward round scripts (Med Teach 2021)

März E, Wessels I, Kollar I, Fischer MR. "I just stand around and look friendly" - Comparing medical students' and physicians' ward round scripts. Med Teach. 2021 Feb 11:1-7. Epub ahead of print.

背景:病棟ラウンドは医学生にとって重要な学習機会であるにも関わらず、学生や医師の好ましくない病棟回診スクリプトが学習の妨げになる可能性がある。本研究では、学生と医師の病棟ラウンドのスクリプトについて、(a) 病棟ラウンドの内容の焦点、(b) 知識構築のための可能性について、検討した。

方法:専門性の異なるステージの内科の学生・医師50名を対象に、定型的なインタビューを実施した。参加者が病棟ラウンドで典型的だとラベル付けした活動を、その内容の焦点と、知識構築への可能性に関して、コード化した。

結果:内容の焦点については、特にresidentは、主に患者ケアに関連した活動を挙げていた。指導・学習関連の活動は非常にまれだったが、学生や経験豊富な医師の方がより頻繁に言及していた。知識構築の可能性については、病棟回診での典型的な活動 (=知識構築の可能性が低い)を、特に自分の役割について述べる場合には、より受動的な活動とみなしていた。

結論:医学生は、病棟ラウンドを貴重な学習機会と考えるようになるように支援すべきである。residentは、例えば病棟ラウンド中に学生の積極的な参加を求めるなど、自分たちの教育責任を真剣に考えるように求められるべきである。

個人的所感:病棟回診は、医学生・医師が皆経験している活動ですし、目のつけどころが素晴らしく、是非見習いたいリサーチです。

Incorporating aspects of programmatic assessment into examinations: Aggregating rich information to inform decision-making (Med Teach 2021)

Pearce J, Reid K, Chiavaroli N, Hyam D. Incorporating aspects of programmatic assessment into examinations: Aggregating rich information to inform decision-making. Med Teach. 2021 Feb 8:1-8. Epub ahead of print.

背景:評価へのプログラム的アプローチは、進捗状況の決定に情報を提供するために、受験者に関する「豊富な情報」を収集し、集約することを必要とする。しかしながら、このようなアプローチが実際にどのように実施されるかについてのガイダンスはほとんどない。我々は、専門医大における委員会の意思決定に情報提供するために、評価形式を超えた豊富な情報を集約するアプローチについて、記述した。

方法:すべての試験の各項目 (n = 272)を、15個のカリキュラムモジュールと7個の習熟度に設計した。各項目の期待されるパフォーマンス基準を詳細に示したルーブリックを用いて、6段階の総合的な評価尺度を作成した。試験官はこの評価尺度を用いて、各項目の判定を行い、各受験者の豊富なパフォーマンスデータを作成した。

結果:モジュールと習熟度のパターンを色分けした「モザイク」が、評価の頻度分布とともに生成された。これらのデータによって、試験官は、受験者のパフォーマンスを簡単に可視化し、ボーダーラインの受験者の審議に情報を提供することができた。プロセス全体を通じて評価情報の豊富さを維持することで、委員会の意思決定が容易になった。さらに、データは、受験者への詳細で有益なフィードバックを容易にした。

結論:本研究は、情報を集約する新しいアプローチを用いて高得点試験にプログラム的思考の側面を取り入れることが、プログラム評価を改革するうえで、有用な第一歩であることを示した。

A SWOT analysis of Italian medical curricular adaptations to the COVID-19 pandemic: A nationwide survey of medical school leaders (Med Teach 2021)

Consorti F, Kanter SL, Basili S, Ho MJ. A SWOT analysis of Italian medical curricular adaptations to the COVID-19 pandemic: A nationwide survey of medical school leaders. Med Teach. 2021 Feb 8:1-8. Epub ahead of print.

背景:医学教育がCOVID-19 pandemicにどのように対応するのかについての文献が増えてきている。しかしながら、これらの対応を促進するものや障壁について探索する必要がある。本研究は、イタリアのメディカルスクールのカリキュラムのCOVID-19 pandemicへの対応法の強み、弱み、機会、脅威 (SWOT)を探索した。

方法:イタリアの医学カリキュラムのディレクターを対象に、オンライン調査を行った。カリキュラム対応やその対応への省察についての自由回答を、質的テーマ分析を用いて解析した。

結果:60人のイタリアのメディカルスクールのディレクターのうち、20人が調査を完了した。強みは、迅速な対応と協力の精神が挙げられた。弱みは臨床施設への依存、教師のテクノロジー活用能力の低さ、スタッフのメンタルヘルスサポート不足が挙げられた。機会は、明確な政府のルール、あまり表に出てこなかったテーマに新たな焦点を当てることが挙げられた。脅威は、人間関係の悪化、オンライン評価に関連した困難、ITアクセスの欠如、法的・保険的問題が挙げられた。

結論:本研究は、世界的なpandemicが活発化するなかでのイタリアのメディカルスクールのカリキュラム適応を記録し、医学教育リーダーの視点を記録することで、将来に向けた重要な教訓を提供するものである。

One Institution's evaluation of family medicine residency applicant data for academic predictors of success (BMC Med Educ 2021)

Busha ME, McMillen B, Greene J, Gibson K, Milnes C, Ziemkowski P. One Institution's evaluation of family medicine residency applicant data for academic predictors of success. BMC Med Educ. 2021 Feb 2;21:84.

背景:家庭医療レジデンシーは,変化する環境のなかでリクルートをナビゲートしている.allopathicおよびosteopathicのプログラムの認定の統合,大量の志願者,そしてUSMLEのspte1から合否報告への移行が間近に迫っていることの全てが要因となっている.今回の後ろ向きコホート研究では,学生の学歴のどの要素がレジデンシーへの準備を最もよく予測するかを評価した.

方法:2020年に,2013年から2020年の間の単一のレジデンシープログラムのレジデンシー卒業生の申請者データと初期のレジデンシーデータを分析した.これには,卒前の教育の特徴,メディカルスクールの学業成績,メディカルスクールの学業上の問題 (プロフェッショナリズムなど),STEP私見,メディカルスクールの所在地,レジデンシーの最初の6ヶ月間の評価が含まれていた.入職した110人のresidentのうち,97人 (88%)について評価データが得られた.

結果:入職前のUSMLEデータは,米国家庭医療学会 (ABFM)のトレーニング中の私見と正の相関があった.入職前の試験データは,ACGMEの6つのコンピテンシードメインのいずれにおいても,residentの評価と正の相関は認められなかった.メディカルスクール在学中に学業上の問題を抱えていたresidentやUSMLEで不合格となったresidentの定義されたコホートは,ACGMEの6つのコンピテンシーの評価において,そのような歴史のないresidentと,統計学的に類似した成績を示した.

結論:学業状の問題を抱えていた志願者は,そうでない志願者と比べても,臨床環境での成績は同等である.入職前私見とABFMトレーニング中試験の間には正の相関関係が認められたが,これはACGMEコンピテンシーの臨床評価には及ばなかった.

Self-directed learning by video as a means to improve technical skills in surgery residents: a randomized controlled trial (BMC Med Educ 2021)

Chartrand G, Soucisse M, Dubé P, Trépanier JS, Drolet P, Sideris L. Self-directed learning by video as a means to improve technical skills in surgery residents: a randomized controlled trial. BMC Med Educ. 2021 Feb 5;21:91.

背景:外科residentは,厳しいスケジュールのなかで,技術を訓練する時間が限られている.本研究の目的では,外科residentにおいて,ビデオを用いた,自己主導型学習 (self-directed learning; SDL)の教育モデルを評価することである.

方法:参加者全員からインフォームド・コンセントを得た.2018年にHôpital Maisonneuve-Rosemont(モントリオール大学)において,RCTを行った.参加者は,一般外科residentだった.対象となるresidentは27名で,22名が調査を完了した.彼らは,死体の豚腸に腸管吻合を行う様子を,ビデオ撮影された.ビデオによる自己主導型学習群 (SDL-V)には,経験豊富な外科医が行う手技を実演したエキスパートビデオが与えられた.コントロール群は通常の業務を継続した.3週間語,参加者は,2回目の吻合を行い,ビデオ撮影された.2人の外科attendingが,Objective Structured Assessment of Technical Skills scaleを用いて,撮影された,residentの吻合を評価した.2回目の吻合術後,参加者全員がエキスパートビデオにアクセスし,また調査に回答した.

結果:1回目または2回目の撮影での吻合術の間に,両群間で有意な差はなかった(1回目 control: 23.6 (4.5) vs. SDL-V: 23.9 (4.5), p = 0.99, presented as mean (SD)) (2回目 control: 27.1 (3.9) vs. SDL-V: 29.6 (3.4) p = 0.28).両群ともに,介入前から後にかけて有意に改善した (mean difference between the two anastomosis procedure with 95% CI for control: 3.5, [1.1; 5.9] and for SDL-V: 5.8, [3.4: 8.2]).評価者間のスコアの相関は中程度であった (r = 0.6, 95% CI: [0.3: 0.8]).合否のグローバル評価は,評価者間の信頼性が低かった (Kappa: 0.105, 95% CI: [- 0.2:0.4]).調査では,参加者全員が,特定の手術手技のエキスパートによるビデオをより多く希望していた.

結論:介入群では最終的なOSATSスコアが高かったにもかかわらず,ビデオによる自己主導型学習は,この小さなコホートでは,2群間のOSATS全体のスコアに統計的に有意な差をもたらすことができなかった.