医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Exploring yarigai: The meaning of working as a physician in teaching medical professionalism (Med Teach 2024)

Nishigori H, Shimazono Y, Busari J, Dornan T. Exploring yarigai: The meaning of working as a physician in teaching medical professionalism. Med Teach. 2024 Feb 20:1-8. Epub ahead of print.

背景:バーンアウトの蔓延やワークライフバランスの重要性から、医療におけるプロフェッショナリズムの転換が医師のウェルビーイングを考えるようになった。本研究では、「なぜ医師は患者のために働くのか」という問いを再考し、医師として働く意味を探るために、意義のある仕事における充実感やモチベーションを表す「ヤリガイ (yarigai)」という概念を採用した。著者らのリサーチ・クエスチョンは以下の通りである: 医師は患者を診るなかでどのような「ヤリガイ」の経験を語るのか?医師が語る「ヤリガイ」にはどのような価値観が込められているのか?

方法:本研究の方法論としてnarrative inquiryを採用した。患者中心のケアへのコミットメントが同僚から認められている、あるいは患者をケアする際にヤリガイを発揮した15人の医師にインタビューを行った。半構造化面接は、日本人研究者が各対象者と対面して行い、51例の患者-医師間の相互作用が得られた。インタビューデータをグループ分けした後、研究者らはケースを英語に翻訳し、設定された基準に基づいて代表的な4つのケースを発表した。

結果:51の事例研究から、医師としてのヤリガイについて4つの代表的なナラティブが構築された。それぞれ、(1)困難な状況のなかでポジティブな意味を見出すこと、(2)イキガイを体現したギフトを受け取ること、(3)一見無力に見える人間の強さを目の当たりにすること、(4)時間的な境界を超えた人間関係を培うこと、が医師として働くやりがいとして語られた。研究の主な成果である語りについては、本文で述べる。

結論:ヤリガイに関する語りは、職業生活に本質的な意味を与えており、学生、レジデント、若手医師が医師として働く意味を考える際に参考になる。医師が患者に対して無私の献身を求めるよりも、患者のケアを通じて他者のウェルビーイングに貢献することで得られる「ヤリガイ」を育むことの方が重要であると彼らは考えている。