医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

It is Challenging to Shift the Norm: Exploring how to Anticipate and Address Microaggressions in Clinical Learning Environments (Perspect Med Educ 2023)

Sukhera J, Atkinson TM, Bullock JL. It is Challenging to Shift the Norm: Exploring how to Anticipate and Address Microaggressions in Clinical Learning Environments. Perspect Med Educ. 2023;12:575-583.

背景:臨床学習環境における帰属文化の改善への関心が高まり、マイクロアグレッションに対処するための様々なアプローチが行われている。しかし、文献にあるほとんどのアプローチは、マイクロアグレッションへの対応や反応に重点を置いており、マイクロアグレッションが起こりうる前に信頼関係を構築することには十分な注意が払われていない。臨床学習環境におけるマイクロアグレッションに関する研究は、マイクロアグレッションに関する予期的または先制的な会話が、より大きな信頼を育む可能性を示唆している。本研究では、多様な参加者が、潜在的なマイクロアグレッションに関する予期的な会話の経験をどのように認識しているかを調査した。全体として、著者らは、臨床学習環境におけるマイクロアグレッションに対処するための組織のアプローチに、先制的・予期的な会話がどのような影響を及ぼすかについて、より深い理解を得ることを目指した。

方法:著者らは構成主義的グラウンデッド・セオリー(基礎理論)のmethodologyを利用し、米国の大規模な医療科学センター内の学術部門に所属する21名の参加者と個別質的面接を行った。

結果:ダイナミックな臨床学習や職場環境における既存の規範のために、マイクロアグレッションについての予期的な会話は困難であったことが示唆された。参加者は、マイクロアグレッションを予期するという考えが不協和音を引き起こしていることを共有した。マイクロアグレッションに関する会話は、脆弱性の模範となる指導者、組織的支援、複雑な階層構造の組織内における各チームメンバーとその役割に応じた個別的なアプローチによって促進される可能性がある。

結論:臨床学習環境においてマイクロアグレッションを予見し、対処することは非常に大きな可能性を秘めているが、個人のアイデンティティに関する会話は、医療やヘルスケア環境においては依然として困難である。本研究は、マイクロアグレッションに対処しようとする試みには、医療環境における文化的規範と、階層的組織が個人の主体性を制約する方法に注意を払う必要があることを示唆している。