医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'The program director's word … it's stronger than the word of God': Epistemic injustice revealed through narratives of remediated graduate medical education residents (Med Educ 2023)

Percival CS, Maggio LA, Wyatt TR, Martin PC. 'The program director's word … it's stronger than the word of God': Epistemic injustice revealed through narratives of remediated graduate medical education residents. Med Educ. 2023 Dec 22. Epub ahead of print.

背景:卒後医学教育(GME)研修は多くの研修生に肯定的な経験をもたらすが、特に再教育 (remediation)を必要とする研修生にとっては大きなストレスや否定的な経験をもたらすこともある。再教育を必要とするレジデントは、落胆、恥、罪悪感などの感情を経験し、研修、自己効力感、医療キャリアに悪影響を及ぼす可能性がある。教育者とレジデントとの間の力の差は、認識論的不正義(epistemic injustice)、すなわちアイデンティティの偏見に基づいて発言者を黙らせたり、退けさせたりすることから生じる不公正の舞台となる可能性がある。これは研修生の学習意欲の低下につながる。レジデントの視点からGMEにおける再教育の経験を調査した文献は少ない。本研究の目的は、研修期間中に再教育を受けた医師の体験談を、認識論的不正義のレンズを通して統合すること。

方法:2022年1月から7月にかけて、研修期間中に再教育を受けた経験があると自認する米国人医師にインタビューを行った。彼らは、再指導を受けるに至った経緯、その過程や結果についての個人的な見解や感情を共有した。インタビューは、認識論的不正義の事例に注目したナラティブ分析を用いて分析した。

結果:多様な経歴、専門分野、施設を持つ10名の参加者にインタビューを行った。参加者全員が、再教育の一因となったと思われる文脈的要因について述べている。(1)学業上の困難があった/伝統的な医学への道でなかった、(2)医療上の障害があった、(3)人種、性別、性的アイデンティティがマイノリティであった、などである。参加者は、自分たちのニーズを表現しようと試みたにもかかわらず、これらの背景がプログラムにおいて自分たちをより脆弱にしていると感じた。参加者は、重要な影響を及ぼす信頼性の低下や認識論的不正義の事例を報告した。

結論:参加者の語りは、学習者と教育者の間の深い権力と認識論的不均衡が、GME研修生の心理的安全を損ない、その結果、専門的・個人的危害の事例をもたらす可能性があることを強調した。本研究では、プログラム責任者(PDs)がエピステミックな謙虚さをもって是正に取り組むために、既存の枠組みを適用することを提案する。