医学教育研究者・総合診療医のブログ

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The development of cultural competences in nursing students and their significance in shaping the future work environment: a pilot study (BMC Med Educ 2023)

Ličen S, Prosen M. The development of cultural competences in nursing students and their significance in shaping the future work environment: a pilot study. BMC Med Educ. 2023;23:819.

背景:文化的に多様な環境で働くことは、文化的に適切なケアを提供するという道徳的・専門的責任を伴う。これは、健康格差を是正し、ケアの質を向上させ、患者の満足度を高めるための重要な手段であると認識されている。本研究の目的は、スロベニアの看護カリキュラムにtranscultural nursingの内容が導入されてから10年後の看護学生の文化的能力のレベルを評価することである。

方法:180名の看護学生をconvenience sampleとして、記述的横断的デザインを用いた。文化的能力は、オンライン調査によるCultural Competence Assessment Tool (CCATool)を用いて評価した。IBM SPSSにより、記述統計およびカイ二乗検定などの推測法を用いて統計分析を行った。ノンパラメトリック検定(Mann Whitney U、Kruskal-Wallis H、Wilcoxon signed-rank)は正規分布でないデータ(Shapiro-Wilk検定、p < 0.05)に使用した。有意性はp ≦ 0.05とした。

結果:その結果、CCAToolのコーディングによって決定された文化的感受性の点では改善の余地があるものの、学生は高いレベルの文化的能力を示していることが示された。また、自己評価スコアと、各サブスケールのステートメントをCCAToolでコーディングして得られた客観的スコアとの間には、顕著なコントラストが見られた(p < 0.005)。さらに、サブスケール「文化的知識」において、特に6ヶ月以上海外に住んだことのある学生とそうでない学生との間に有意な差(p = 0.002)が見られた。後者のグループはCCAToolのスコアが高く、文化的知識が高いことを示している。

結論:本研究は、スロベニアの看護カリキュラムにおけるトランスカルチュラルな要素の存在が、看護学生の文化的能力の自己申告レベルの高さと関連していることを示唆している。この能力は、学生が将来の職業環境に備えるうえで非常に重要である。しかし、看護カリキュラムをさらに洗練させること、特にすべての保健分野において異文化に関する内容をより統合させることが極めて重要である。さらに、革新的な教育・学習アプローチを導入することで、学生が看護のキャリアにおいて遭遇するであろう多様な文化的経験に対処する準備をより整えることができる。