医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Fragilising clients: A positioning analysis of identity construction during clinical psychology trainees' supervision (Med Educ 2023)

Schubert S, Monrouxe LV, Buus N, Hunt C. Fragilising clients: A positioning analysis of identity construction during clinical psychology trainees' supervision. Med Educ. 2023 Sep 14. Epub ahead of print.

背景:欧米の精神医療制度改革は、患者中心のケアを優先し、臨床家は自らの専門的立場を調整する必要がある。このような改革を実現するためには、臨床心理士を含む臨床家が、改革に沿ったプロフェッショナル・アイデンティティを獲得する必要がある。監督のような相互作用の場において、学習者は自己(臨床家)、ひいては他者(クライアント)を理解するようになる。臨床家の「自分は何者か」という理解は、「自分は何者か」という理解と絡み合っている。本研究では、臨床心理学研修生の監督の相互作用を瞬間ごとに検証し、セラピストとクライアントのアイデンティティが構築されるプロセスを明らかにする。臨床心理学研修生と監督が、監督においてどのように自分自身とクライアントのアイデンティティを構築しているのかを検討した。

方法:臨床心理学研修クリニックにおける監督者(n = 4)と研修生(n = 12)の相互作用におけるアイデンティティの構築について、ポジショニング分析 (positioning analysis)を用いて検討した。ポジショニング分析は、参加者が日常的な相互作用のなかで、特定の社会的空間において自分自身(および他者)を位置づける際に行う言語的選択に焦点を当てる。12回の監督のセッションを録音し、文字起こしした。我々は、クライアントが頻繁に壊れやすいと位置づけられることを発見し、その後、これらのシーケンスを分析した(n = 12)。

結果:クライアントのアイデンティティは壊れやすいものとして構築され、それは臨床心理士がクライアントの苦痛を管理する責任があると主張することと共起していた。監督者は、このようにクライアントと研修生を言語的に位置づけることに積極的な役割を果たした。研修生は、監督者によって利用可能にされたアイデンティティに異議を唱えることはほとんどなかった。

結論:クライアントを壊れやすい存在として言語的に位置づけることは、精神医療改革の優先事項とは一致しないパターナリスティックな臨床言説を永続させることを示唆する。このことが、言語を通して相互作用的に達成され、組織の力関係に影響されていることを可視化する。パターナリズムを永続させない方法で、臨床心理士のプロフェッショナル・アイデンティティ構築を支援するための意図的な取り組みが必要である。このような取り組みを支援するために、教育と臨床実践に対する提言を行う。