医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Volunteering as prosocial behaviour by medical students following a flooding disaster and impacts on their mental health: A mixed-methods study (Med Educ 2023)

Bailie J, Reed K, Matthews V, Scott KM, Ahern C, Bailie R. Volunteering as prosocial behaviour by medical students following a flooding disaster and impacts on their mental health: A mixed-methods study. Med Educ. 2023 Sep 3. Epub ahead of print.

背景:ボランティアは向社会的行動 (prosocial behaviour)の一形態であり、医学生にとってポジティブな利益になると認識されてきた。しかし、天候に関連した災害時や災害後に学生がボランティア活動を行うことにどのような影響を与えるかについての研究は不足している。本研究では、(1)医学生のボランティア活動への意欲と準備態勢に関連する要因を探り、(2)洪水災害が学生に与えた精神的健康への影響について述べる。

方法:2022年に発生した2つの大洪水から2~6週間後に、オーストラリアの地方で臨床実習を行った医学生を対象に、混合法による研究を実施した。調査およびフォーカスグループを通じてデータを収集した。調査データから要約統計量を作成し、フィッシャーの正確検定を用いて、学生の洪水体験と自己評価によるウェルビーイングとの関連を明らかにした。質的データは、Byrneらの緊急時の向社会的行動に関する理論を用いて演繹的に分析した。

結果:フォーカス・グループに参加した36人の学生(アンケートに回答した34人を含む)(回答率はそれぞれ84%と79%)は、高いレベルの向社会的行動を示し、ボランティア活動に積極的であった。道徳的義務感がボランティアをする主な理由であったが、身体的・心理的安全への懸念や、訓練の重要な側面を見逃すことが、ボランティアを続けない最も強い理由であった。学生は、この期間中に個人的なストレス、不安、トラウマを報告し、自己評価によるウェルビーイングへの影響と恐怖感、洪水時の無力感・絶望感と数週間後も苦悩していることとの間に有意な関連がみられた(p < 0.05)。

結論:本研究は、Byrneらの精緻なモデルを、2022年にオーストラリアで発生した大洪水時の医学生のボランティア活動に適用することで、向社会的行動理論を発展させたものである。向社会的行動に対する修正可能な障壁が、これらの障壁に対処するための提案された戦略とともに同定された。