医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Finding Themselves, Their Place, Their Way: Uncertainties Identified by Medical Students (Teach Learn Med 2023)

Lee C, Hall KH, Anakin M. Finding Themselves, Their Place, Their Way: Uncertainties Identified by Medical Students. Teach Learn Med. 2023 Jul 12:1-11. Epub ahead of print.

背景:不確実性 (uncertainty)に対処することは、医療を実践するうえで核となるスキルである。医学生が不確実性に対してより良い準備をする必要性がますます認識されるようになってきている。不確実性に対する医学生の視点についての現在の理解は、主に量的研究に基づいており、質的研究はこれまでほとんど行われていない。我々は、教育者が医学生が不確実性に対応するための学習をよりよく支援できるように、不確実性の原因がどこからどのように生じるのかを知る必要がある。本研究の目的は、医学生が教育においてどのような不確実性の要因を認識しているかを明らかにすることである。

方法:以前に我々が発表した臨床的不確実性の枠組みを参考に、ニュージーランド・オタゴ大学の医学部2年生、4年生、6年生を対象に調査を計画し、配布した。2019年2月から5月にかけて、716名の医学生に、これまでの教育で遭遇した不確実性の原因を特定するよう呼びかけた。reflexive thematic analysisを用いて回答を分析した。

結果:465名の参加者がアンケートに回答した(回答率65%)。不確実性の主な原因は、「不安定 (insecurity)」、「役割の混乱」、「学習環境の調整」の3つであった。不安定は、知識や能力に対する生徒の疑念に関連しており、それは同級生と自分を比較することによって拡大した。役割の混乱は、学生の学習能力、周囲の期待に応える能力、患者ケアに貢献する能力に影響を与えた。臨床と非臨床の学習環境の教育的、社会的、文化的特徴をうまく利用することは、学生が新しい環境や上下関係に直面し、発言することの難しさを認識したことから、不確実性をもたらした。

結論:本研究は、医学生が自分自身をどのように捉え、どのような役割を果たし、学習環境とどのように相互作用しているのかを含む、医学生の幅広い不確実性の原因について深く理解するものである。これらの結果は、医学教育における不確実性の複雑さについての理論的理解を深めるものである。この研究から得られた知見は、教育者が、学生が医療実践の中核的要素に対応するスキルを身につけるのをよりよく支援するために応用することができる。