医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Examining the nexus between medical education and complexity: a systematic review to inform practice and research (BMC Med Educ 2023)

Ogden K, Kilpatrick S, Elmer S. Examining the nexus between medical education and complexity: a systematic review to inform practice and research. BMC Med Educ. 2023;23:494.

背景:医学教育は、様々な教育学や哲学を統合した多角的な試みである。科学や理論としての複雑性(complexity)は、還元主義的なパラダイム (reductionist paradigm)から、医療システムのような多成分システムにおける相互作用が、適応的で創発的な結果をもたらすことを評価するパラダイムへの移行を示唆している。医学教育と複雑性理論の結びつきを検証する本調査は、複雑性理論が医学教育や医学教育研究にどのような情報を提供できるかを発見することを目的としている。

方法:医学教育と複雑性の結びつきを検討するために、構造化された文献レビューを行った。複雑性を科学または理論として十分に扱い、医学教育に大きく焦点を当てた論文を対象とした。概念的な論文(意見や理論的な議論など)、事例研究、プログラム評価、実証研究など、あらゆる種類の論文が対象となった。医学教育における複雑性の利用について深く理解するために、ナラティブおよびテーマ的統合が行われた。

結果:83の論文が含まれ、大多数は概念的な論文であった。医学教育に関連する理論としての複雑性の背景と理論的基盤が明らかにされた。医学教育への複雑性の導入に関して、書誌的および時間的な観察が行われた。複雑性は、知識・学習理論、カリキュラム・プログラム・教員養成、プログラム評価・医学教育研究、評価・入学試験、プロフェッショナリズム・リーダーシップ、システムのための学習、システムについての学習、システムにおける学習など、医学教育におけるさまざまな要素を網羅する実証的研究の理論的枠組みとして依拠された。

結論:医学教育者が理論をより活用することが求められている。医学教育における複雑性は、広まってはいないものの、確立されている。個人主義的な医学文化と還元主義的な認識論への安住が、その導入に挑戦している。しかし、複雑性は、限られた著者によって、様々な分野で有用な理論であることが見出され、医学教育者や医学教育研究者によってますます利用されるようになってきている。このレビューでは、複雑性が医学教育や医学教育研究を支援するためにどのように利用されているかをさらに概念化した。