医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

How do medical students learn about SDH in the community? A qualitative study with a realist approach (Med Teach 2022)

Haruta J, Takayashiki A, Ozone S, Maeno T, Maeno T. How do medical students learn about SDH in the community? A qualitative study with a realist approach. Med Teach. 2022 May 18:1-8. Epub ahead of print.

背景:健康の社会的決定要因(SDH)を学習する必要性が格差社会で高まっているが、教育的介入は複雑であり、学習メカニズムも不明である。そこで本研究では、リアリスト・アプローチを用いて、コミュニティにおけるSDHの学習パターン、すなわちコンテキスト(C)、メカニズム(M)、アウトカム(O)を明らかにした。

方法:日本の医学部5・6年生を対象に、4週間の臨床実習プログラムを実施した。このプログラムでは、SDHに関する講義と、地域社会におけるSDHに関連する事例を探索するグループ活動が行われた。また、医学生が作成したSDH学習の構造的振り返りレポートをCMOの視点からテーマ分析した。

結果:まず、医学生はSDHの概念を予見し、社会モデルが中心となっているコミュニティに参加した。そして、観察学習やロールモデルからの説明によって、視点を変容させていた。第二に、医学生は医療モデルの矛盾に直面することで、確かな事実を統合的に説明するようになった。第三に、複数の地域での具体的な経験を比較し、言語化することで、SDHの概念的な理解が深まった。第四に、医療現場とは異なる権威のない立場から参加することで、一般人への共感が醸成された。

結論:医学生は4種類のSDHの学習パターンを通じて、社会と医療のつながりを学びうる。