Stacy A, Lange M, Katz CL, Waguri S, Yanagisawa R. "I'd like to let people know what we did:" values of Fukushima medical students following the Great East Japan Earthquake. BMC Med Educ. 2023;23:248.
背景:2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う津波・原子力災害は、福島県民、特に避難民に多大な影響を与えた。福島県の復興については、多くの報道や学術的な研究が行われているが、個人のナラティブについては、ほとんど研究されていない。本研究は、震災当時福島県に住んでいた福島県立医科大学 (FMU)の医学生の個人的な物語を明らかにすることを目的としている。
方法:このテーマに関する定量的な研究に個人的な側面を加えることを目的として、個人の経験を調査するために質的なアプローチがとられた。東日本大震災当時、福島県に住んでいたFMUの1~5年の医学生を対象に、10回のオープンエンド型エスノグラフィック・インタビューを実施した。すべてのインタビューは音声録音され、書き起こされた。書き起こしは、ethnographic anthropologyのレンズのもと、帰納的テーマ分析を使って検討された。
結果:これらのインタビューの結果、3つのメジャーなテーマが現れた。第一に、震災後の出来事が、医学の道に進むという決断だけでなく、将来どのような形で医学を実践したいかということにも影響を与えたということである。次に、福島県のイメージを変えたいという思いが、自分の体験を共有する動機になっていること。そして最後に、学生たちはインタビューを通じて自分の体験を語る機会を、自分自身と将来のための癒しとして捉えていることである。
結論:震災は、学生たちの医学教育に大きな影響を与えたことは間違いないが、医療に携わるうえで必要不可欠なものであったことがわかる。また、震災後の体験談を語る機会は少ないが、震災後の体験談を"legacies"と捉えており、貴重である。震災の影響による負担は、参加した学生を地域や県のために行動させたと思われる。東日本大震災の社会的、文化的、個人的な影響についての理解を深め、向上させるためには、より一般的な集団を対象としたさらなる質的研究が必要である。