医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Heard, valued, supported? Doctors' wellbeing during transitions triggered by COVID-19 (Med Educ 2021)

Gordon L, Scanlan GM, Tooman TR, Walker KA, Cairns P, Ferguson J, Aitken G, Cecil J, Cunningham KB, Gibson Smith K, Johnston PW, Laidlaw A, Pope LM, Wakeling J. Heard, valued, supported? Doctors' wellbeing during transitions triggered by COVID-19. Med Educ. 2021 Nov 18. Epub ahead of print.

背景:医師のウェルビーイングを支援することは、医学教育において、医療従事者の維持、ひいては患者ケアへの長期的な悪影響を最小限に抑えるために非常に重要である。しかし、医師のtransitionの経験が、特に社会的・文化的に、ウェルビーイングにどのような影響を与えるかについての研究は限られている。Multidimensional Transitions (MMT)では、transitionは複数の文脈と複数の領域を含むダイナミックなものであると考えられている。本研究では、MMTをレンズとして用い、パンデミック時に医師が経験したtransitionが、社会的・文化的なウェルビーイングにどのような影響を与えたかについて、質的分析を行った。

方法:インタビューとオーディオ・ダイアリーを用いて、縦断的なナラティブ調査を行った。データは6ヶ月間、3つの段階で収集された。(1)キャリアの異なる医師へのインタビュー(n = 98)、(2)2~4ヶ月間の縦断的なオーディオ・ダイアリー(n = 71)、(3)セカンド・インタビュー(n = 83)。データは帰納的に分析され、社会的・文化的ウェルビーイングにとって重要な要因に焦点が絞られた。

結果:医師は、パンデミックをきっかけに、職場、役割、家庭生活、教育など様々な場面で、相互に影響し合う複数の変化を経験したと述べた。データセット全体で識別可能なパターンにより、個人の経験を超えて横断的に社会的・文化的ウェルビーイングを探ることができた。社会的・文化的ウェルビーイングには、ポジティブにもネガティブにも、次の3つの重要な要因が寄与していた。すなわち、「話を聞いてもらえる」(例:同僚が様子を伺う)、「評価してもらえる」(例:組織が価値のない休憩スペースを撤去した)、「サポートしてもらえる」(例:教育機関による定期的な説明会)である。

結論:本研究は、COVID-19パンデミックの際に医師が経験した多元的な変遷を縦断的に調査した初めての研究である。我々のデータ分析により、ウェルビーイングに関する既存の認識を超えて、社会的・文化的ウェルビーイングに貢献する複数の要因を明確にすることができた。医学教育者は、研修中の医師とそのトレーナーにとってどのようなサポートが有益であるかを明確にするために、これらの経験からの学びを考慮することが重要である。本研究は、医師の声に耳を傾け、価値を認め、サポートを受けることができるような、エビデンスに基づいた介入策を開発するための基礎となる。