Haruta J, Ando T, Fujishima S. How do medical students learn in an online community diagnostics program? BMC Med Educ. 2023;23:15.
背景:格差のあるコミュニティにおける健康の社会的・環境的決定要因を理解するために、医学生を参加させる必要性が高まってきている。しかし、これまでのレビューでは、地域診断プログラムとプログラム評価が限定的であることが指摘されている。プログラムの実現可能性を考えると、オンラインで広く利用できるようになることが期待される。そこで本研究では、オンラインコミュニティ診断プログラムによる学習パターン、すなわちコンテキスト(C)、メカニズム(M)、アウトカム(O)のパターンをリアリスト・アプローチで明らかにした。
方法:日本の医科大学の医学部4年生と5年生を対象に、2週間の総合診療科臨床実習プログラムを実施した。このプログラムでは、1時間のzoomを用いた講義、地域診断に関するプレゼンテーションのフィードバック、地域診断に関する構造レポートが行われた。時間的・空間的・社会的側面を持つ状況における識別と変化を学習の中核と捉える変動理論 (variation theory)に基づき、プログラムを開発した。プログラムを通しての学生の学びの振り返りを、CMOの視点を通してテーマ分析した。オンライン診断プログラムの評価で用いたリアリスト・アプローチにより、どのようなメカニズムがどのような条件(文脈)で、どのような介入(機会や資源を含む)により機能するかを探索、検証、改良し、そこから繰り返し説明可能な結果を記述することができる。
結果:第一に、限られた居住区でほとんどの時間を過ごす医学生は、発見学習や仲間同士の比較により、自分たちのコミュニティの特性を発見した。第二に、彼らは地域診断を通じて、身近な地域の具体的な課題を見出すことで、地域に対する内発的な関心を高めた。第三に、学習担当の健康問題に関する地域データ間の関係を明らかにすることで、地域診断を大切にするようになった。第四に、柔軟な思考が可能となり、地域社会に適合した新たな知識を創造し、自分自身への内省を促すことができた。
結論:本オンライン地域診断プログラムでは、医学生は4種類の学習パターンを通じて地域について学んだ。医学生は、プログラム開発の視点としての変動理論や、コミュニティの本質的な曖昧さや抽象性をめぐる認知的柔軟性理論を用いて、関心を持ってコミュニティに対する理解を深めることができるだろう。