医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Scratching beneath the surface: how organisational culture influences curricular reform (Med Educ 2022)

Shah AP, Walker KA, Hawick L, Walker KG, Cleland J. Scratching beneath the surface: how organisational culture influences curricular reform. Med Educ. 2022 Dec 2. Epub ahead of print.

背景:医学教育・訓練を改善する手段として、カリキュラムの改革がしばしば提案される。しかし、組織文化 (organisational culture)が変化に与える影響に十分な注意が払われていないためか、改革そのものが顕著な変化につながらないことがある。我々は、外科系教育における組織文化と変化の相互作用を調べるために、初期の外科系トレーニングの全国的な改革を自然な機会として利用した。具体的な研究課題は、「組織文化は、Improving Surgical Training(IST)の実施にどのような形で影響を及ぼしたか」である。

方法:本研究は、社会構成主義に基づく質的研究である。2020年から2021年にかけて、スコットランド全域の中核的な外科研修生(n = 46)とその指導にあたるコンサルタント(n = 25)に対してインタビューを実施した。データのコーディングと分析は、当初は帰納的に行われた。テーマは、IST導入の障壁または実現要因として、多くの文化的要因の重要性を示した。そこで、ジョンソン(1988)の文化的ウェブモデル (Johnson's (1988) cultural web model)を用いて演繹的な二次データ分析を行い、組織文化のさまざまな要素とそれらがISTに及ぼす影響を特定・検討した。

結果:文化的網は、組織文化が、Johnsonの以下の6つの要素によって、どのようにISTの実施に影響を与え、それらが相互作用してきたのかについて深い理解を可能にした:「儀式とルーチン(例:部門ローテーション)」「ストーリー(例:歴史的なトレーニング規範と文化)」「シンボル(例:フィードバックの仕組み、可視性と置かれた価値)」「権力構造(例:ローカルな文脈で誰が権力を持っているか)」「組織構造(例:人間関係、説明責任)」「管理システム(例:コンサルタントの職務計画、サービス目標)」。しかし、外生的な事象が変化に及ぼす影響については明らかにしなかった。

結論:我々のデータは、このカリキュラム改革が病院によって成功の度合いが異なる文化的な理由を明らかにし、カリキュラム改革は単に推奨事項を実践することではないことを補強するものである。医学教育やトレーニングにおける変化を計画し評価する際には、文脈のさまざまな側面を考慮する必要がある。