医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Prescribing decision-making by medical residents on night shifts: a qualitative study (Med Educ 2022)

Lauffenburger JC, Coll M, Kim E, Robertson T, Oran R, Haff N, Hanken K, Avorn J, Choudhry NK. Prescribing decision-making by medical residents on night shifts: a qualitative study. Med Educ. 2022 May 25. Epub ahead of print.

背景:抗精神病薬ベンゾジアゼピン系薬剤のような副作用が知られている薬剤を入院中に処方することは、ガイドラインでその使用が推奨されているにもかかわらず、非常によくあることである。最適な処方を妨げる要因として、医療従事者からのプレッシャーや疲労が挙げられるが、経験の浅いレジデント、特にこれらの薬剤が頻繁に処方される夜勤時に顕著になることがある。このような状況下では、医師は「熟考した」システム2の戦略よりも、しばしばシステム1の選択と呼ばれる「迅速な」意思決定を行う可能性が高くなる。レジデントがこれらの異なる認知的アプローチをどのように用いているかを理解することは、処方を改善するための介入策の開発に役立つと考えられる。

方法:レジデントによる夜間診療中の最適でない処方に影響を与える意思決定と状況的貢献要因を理解するために、一般内科の入院患者settingのレジデントを対象に、半構造化質的インタビューを実施した。インタビューでは、シフトのルーチン、ストレスの多い状況、処方の意思決定に影響を及ぼす要因、および処方を改善するための仮説的な手段についての見解を引き出した。インタビューは音声録音され、文字起こしされた。データは、immersion/crystallization approachesによりテーマを生成するためにチームによって開発されたコードを用いて分析された。

結果:女性47%、白人43%、アジア人43%、計21名レジデントにインタビューを行った。(1)処方決定に影響する時間的なプレッシャー、(2)上級医や同僚による判断と患者の転帰に対する責任への恐れ、(3)看護師の経験値が高いために増幅される看護師からのプレッシャー、(4)処方に影響する重要な因子としての急性期、(5)デイチームによる適切な引き継ぎなどケアチームのメンバー間のコミュニケーションを向上する戦略、という5つの主要テーマを抽出することができた。

結論:夜勤時の処方において、時間的制約、プレッシャー、患者の急性期状態など、ゆっくり考えるよりも素早く考えることを促す多くの要因があることが明らかになった。処方削減を目的とした介入は、意思決定におけるストレスとプレッシャーの認知をいかに管理するかに取り組むべきである。