医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Internal Medicine Residents' Experience Performing Routine Assessment of What Matters Most to Patients Upon Hospital Admission (Teach Learn Med 2022)

Burstein DS, Chretien KC, Puchalski C, Teufel K, Aivaz M, Kaboff A, Tuck MG. Internal Medicine Residents' Experience Performing Routine Assessment of What Matters Most to Patients Upon Hospital Admission. Teach Learn Med. 2022 Jan 22:1-12. Epub ahead of print.

背景:患者の価値観、目標、優先順位を引き出すことに失敗すると、患者中心のケアを提供する機会を逃すことになる。レジデントが患者の価値観、目標、優先順位を聞き出し、それを日常的な病院でのケアに取り入れた直接の経験については、ほとんど知られていない。

方法:2017年、general internal medicine病棟ローテート中のレジデントに、入院時に、従来のソーシャルヒストリーに加えて、患者から「パーソナルヒストリー」を引き出し、記録するよう依頼した。Personal Historyの定義は、"患者にとって最も重要なこととその理由"を記録することである。パーソナルヒストリーの目的は、患者の価値観、目標、優先順位を理解し、検討することであった。そして、レジデントに対して質的なインタビューを行い、患者の価値観、目標、優先順位を引き出し、日常の病院でのケアに取り入れた経験を理解することを目指した。
この探索的介入は、大規模な都市部の病院で実施された。一般病棟の2チームがパーソナルヒストリーの介入に参加した。対象レジデント(n = 14/15、93%)に対して、一般病棟のローテーション終了後の経験について任意で面接を行った。コプロダクションモデルを用いて、患者中心のケアを実現するために、患者の自己専門性 (self-expertise)と医師の医学的専門性をどのように組み合わせればよいかを探ることを目的とした。

結果:4つの大きなテーマが確認された。1)パーソナルヒストリー聴取には価値があり、患者の自己専門性を引き出すことは医療上の意思決定を変える可能性がある、2)状況的・関係的要因がパーソナルヒストリー聴取の障壁となる、3)提案した介入への賛同のばらつきが努力に影響する、4)意義あるパーソナルヒストリー聴取は、順応性と縦断性をもつプロセスである、である。利点としては、患者とのラポールの向上、複雑な病歴を持つ患者への対応、医師と患者のコミュニケーションの向上が挙げられた。障害としては、患者の苦痛、ラポールの欠如、新たな洞察をもたらさない患者からの返答などがあった。アテンディングの説明責任は、レジデントの努力に影響を与えた。将来的には、重篤な患者への適用、電子カルテへの統合、医学教育で教えるスキルなどが提案された。

結論:レジデントは、入院時に患者からパーソナルヒストリーを聞き出すことについて、概ね肯定的な見解を持っていた。全体として、多くのレジデントは、特定の状況(例:患者が苦痛を感じていない、十分なラポール、緊急医療や過重労働などの競合する優先事項がない)において、患者の価値観、目標、優先事項を引き出し、考慮する能力があると認識していることを伝えている。電子カルテの設計やアテンディングの説明責任などの外的要因は、臨床ケアに患者の価値観、目標、優先順位を日常的に取り入れるレジデントの努力をさらに促進する可能性がある。レジデントと患者の双方が、患者の価値観、目標、優先順位について日常的に話し合うことに慣れることが、患者中心の診療を促進する可能性がある。