医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Faculty perspectives on facilitating medical students' longitudinal learning: a mixed-methods study (Med Educ 2022)

Shagrin BS, Gheihman G, Sullivan AM, Li H, Hirsh DA. Faculty perspectives on facilitating medical students' longitudinal learning: a mixed-methods study. Med Educ. 2022 May 22. Epub ahead of print.

背景:医学生が患者を縦断的にケアすることは、臨床学習を支援し、患者中心性を促進する。しかし、学生の縦断的学習とケアを促進するための教員の経験則に基づく指針はほとんど示されていない。本研究では、relational learningの概念的枠組みを参考に、縦断的教育に対する教員の見解、学生の縦断的学習を促進するための戦略、認識されている障害と促進要因について調査した。

方法:単一の学術医療センターにおいて収束的混合方法アプローチ (convergent mixed-methods approach)を用いて、著者らは2018~2019年に、3つの縦断的臨床コースで教える教員に対して調査および2つのフォーカスグループを実施した。定量的分析では、記述統計学カイ二乗検定を行った。質的内容分析では、演繹的カテゴリーを記述し、帰納的テーマを特定した。

結果:対象教員43名(69%)がアンケートに回答した。91%(n = 39)が、縦断的モデルで教えることはプリセプターとしての経験を高めると回答した。教員は、学生が長期的なケアを提供するために行った活動について、独立して患者と過ごす(n = 38、88%)、フォローアップの電話をかける(n = 35、81%)、自宅や地域ベースの訪問に参加する(n = 20、47%)などと説明した。12名の教員が2つのフォーカスグループに参加した。演繹的分析により、学生の縦断的学習を促進するための戦略、障壁および実現要因の特徴が明らかにされた。戦略としては、「学生に患者をフォローするよう促す」、「教員の適応性」、「指導と期待の設定」、「慎重な患者選択」などが挙げられた。障壁としては、スケジュールの制限、実現要因としては、学生の自発性などが挙げられた。帰納的分析により、教員の学生に対する目標と、教員が教育から得る利益という2つのテーマが明らかになった。目標には、患者やその病気と長期にわたって有意義に関わることが含まれる。教育から得られる利点としては、個人的な満足感、メンターシップ、学生の全体的な評価などが挙げられた。

結論:本研究の調査およびフォーカスグループの結果は、教員の前向きな姿勢と経験、教員の目標とアプローチの特徴、および縦断的な教育と学習を妨げる、あるいは促進する教育環境の要素を明らかにするものであった。本研究で得られた教員の視点は、学生や患者の視点に関する先行研究を踏まえたものであり、教育戦略を提供し、教員の能力開発の指針となりうるものであった。