医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Formal Reporting of Identity-Based Harassment at an Academic Medical Center: Incidence, Barriers, and Institutional Responses (Acad Med 2022)

Vargas EA, Cortina LM, Settles IH, Brassel ST, Perumalswami CR, Johnson TRB, Jagsi R. Formal Reporting of Identity-Based Harassment at an Academic Medical Center: Incidence, Barriers, and Institutional Responses. Acad Med. 2022 Apr 20. Epub ahead of print.

背景:本研究の目的は、あるアカデミック・メディカル・センターにおけるアイデンティティに基づくハラスメント (identity-based harassment)経験の正式な報告について、その発生率、障壁、組織的対応を検討することである。

方法:著者らは、ミシガン大学医学部の教員および医学研修生 4,545 名に、礼節と尊重 (civility and respect)に関する 2018 年の調査に参加するよう呼びかけた。本分析では、過去1年以内に、スタッフ、学生、教員、または患者や患者の家族によって行われた、アイデンティティに基づくハラスメント(セクシュアル・ハラスメント、ジェンダー・ポリシング・ハラスメント、heterosexist harassment、人種差別的セクシュアル・ハラスメント)を少なくとも1種類経験したと回答した人に焦点を当てた。著者らは、ハラスメントを権限のある人に正式に報告した率、報告する際の障壁、報告後の組織の対応について評価した。

結果:1,288名(28.3%)の回答者のうち、83.9%(n = 1,080)がハラスメントを経験したと回答した。ハラスメントを受けた人のうち、10.7%(114/1,067)が正式に報告したと回答し、その内訳はシスジェンダー女性13.1%(79/603)、シスジェンダー男性7.5%(35/464)であった。これらの報告者のうち、シスジェンダー女性の84.6%(66/78人)、シスジェンダー男性の71.9%(23/32人)が、制度による前向きな救済を経験していると回答した。多くの報告者は、組織的な最小化(シスジェンダー女性の42.9%[33/77]、シスジェンダー男性の53.1%[17/32])または報復(シスジェンダー女性の21.8%[17/78]、シスジェンダー男性の43.8%[14/32])の経験を示している。シスジェンダー男性は、トラブルメーカーとみなされるなど、特定の否定的な組織的対応を経験したと回答する傾向が有意に強かった(OR 3.56, 95% CI: 1.33-9.55 )。ハラスメントの経験を正式に報告しなかった回答者では、シスジェンダー女性が、不当な業績評価や成績を与えられたなど、組織的報復に関する懸念を挙げる傾向が有意に高かった(OR 1.90、95%CI:1.33-2.70)。

結論:ハラスメントを経験した回答者の大半は、権威ある誰にも正式に報告しなかった。多くの報告者は、組織的な最小化と報復に直面していた。これらの知見は、学術医療における組織的なハラスメントの予防と対応システムを再構築する必要性を示唆している。