医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Influence of national culture on mentoring relationship: a qualitative study of Japanese physician-scientists (BMC Med Educ 2021)

Obara H, Saiki T, Imafuku R, Fujisaki K, Suzuki Y. Influence of national culture on mentoring relationship: a qualitative study of Japanese physician-scientists. BMC Med Educ. 2021;21:300.

背景:医師科学者 (physician-scientist)の育成は、学術医療機関の重要なミッションである。将来の医師科学者の育成におけるメンターシップの重要性は国際的にも確立されているが、彼らがどのようにメンターされているのか、また国の文化がメンタリング関係にどのような影響を与えているのかについては、あまり多くの情報が得られていない。本研究では、日本人医師科学者のシニアメンターとジュニアメンティーの間のメンタリング関係の文化的特徴を、探索する。

方法:日本人科学者のメンタリング関係を文化的観点から探るために、質的アプローチを採用し。post-doctoral research fellowとして海外で働いた経験のある17人のメンティへの半構造化インタビューを行った。また、Hofstedeの6つの文化的次元のモデルを理論的枠組みとして適用し、彼らの経験の省察と海外に行く前のメンタリング関係の認識を、テーマ分析した。

結果:メンタリングの特徴として、以下の12個の特徴的なテーマが観察された。すなわち1. メンターへの信頼依存、2. パターナリスティックなメンタリングの受容、3. 力関係に基づくメンターの期待内でのメンティーの自発性、4. メンター・組織・同僚への忠誠心、5. 集団主義 (collectivism)に基づくメンターとの家族的な関係、6. 不確実性回避によるメンターに導かれる安心感、7. 競争の激しいアカデミックな世界でのロールモデルによる動機付け、8. 男性性に基づく男性優位のアカデミックな構造への女性メンティー/メンターの適応、9. メンターとメンティーの長期的な関係、10. 長期的な志向に基づく組織の継続性のためのアドバイスを受けること、11. 余暇よりも仕事を優先すること、12. 甘えに基づく仕事以外でのメンターとメンティーの友好的な関係。

結論:本研究では、日本の医師科学者の卒後のメンティーの特徴的なメンタリング関係を明らかにした。グローバル化した社会における医師科学者のメンタリングの重要性を考えると、各国の文化の特徴を理解することは、文化に配慮したメンタリングを確保するのに役立ち、学術的な医学の発展に貢献すると考えられる。