医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Intimidation, harassment, and discrimination during family medicine residency training: a mixed methods study (BMC Med Educ 2021)

Szafran O, Woloschuk W, Torti JMI, Palacios Mackay MF. Intimidation, harassment, and discrimination during family medicine residency training: a mixed methods study. BMC Med Educ. 2021;21:173.

背景:家庭医療residentのwell-beingの重要性は、支援的で尊重的な学習環境を求める認定要件で認識されているが、医療環境における学習者の虐待 (mistreatment)については懸念が存在する。本研究の目的は、家庭医療の卒業生が研修中に経験した脅迫、ハラスメント、差別 (intimidation, harassment and discrimination; IHD)について記述することであった。

方法:2006年から2011年の間に研修を修了した家庭医療の卒業生を対象に、混合法による研究を行った。定量的要素であるフェーズ1では、651名の卒業生を対象とした後ろ向き調査を実施した。質的要素であるフェース2は、11回の質的インタビューで構成された。調査とインタビューの両方で、IHDの頻度と種類、環境、加害者、IHDの根拠、IHDの影響などに関する卒業生の経験を取り上げた。

結果:アンケートの回答率は47.2%で、回答者の44.7%が研修中に何らかの虐待/IHDを経験したと答え、69.9%が1回以上経験したと回答した。IHDの主な発生源は、専門医(75.7%)、病院の看護師(47.8%)、家庭医(33.8%)であった。IHDの種類としては、「不適切な発言」が最も多かった(86.8%)。卒業生は、IHDの根拠として、権力の濫用(69.1%)、性格の不一致(36.8%)、キャリア選択としての家庭医(30.1%)を認識しており、これらはインタビュー参加者も説明していた。IHDの根拠を文化・民族性と認識しているのは、CMGよりもIMGの方が有意に多かった(それぞれ47.2%対10.5%)。卒業生の大多数(77.3%)は、IHDの経験が、自尊心や自信の低下、不安の増大、睡眠障害などのマイナスの影響を与えたと報告した。また、研修生として、怒り、脅威、やる気のなさ、落胆、操られている感覚、無力感を感じていた。うつ病バーンアウトを発症し、薬を服用したり、カウンセリングを受けたりした者もいた。

結論:IHDは家庭医療の研修期間中に引き続き蔓延しており、病院環境や専門ローテーションで最も頻繁に発生していた。教育機関は病院管理者と協力して、職場での虐待の問題に取り組まなければならない。研修プログラムと医療機関は、IHDの影響が広範囲に及ぶことを認識し、IHDを根絶するために継続的に取り組む必要がある。