医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Does a suggested diagnosis in a general practitioners' referral question impact diagnostic reasoning: an experimental study (BMC Med Educ 2022)

Staal J, Speelman M, Brand R, Alsma J, Zwaan L. Does a suggested diagnosis in a general practitioners' referral question impact diagnostic reasoning: an experimental study. BMC Med Educ. 2022;22:256.

背景:診断エラー (diagnostic error)は、予防可能な患者被害の主な原因である。不正確な診断提案の提示は、医師の診断推論過程にエラーを引き起こす可能性があることを示唆する研究がある。general practitioners (GPs)が患者を二次医療に紹介する際に、診断を提案することは一般的である。しかし、この習慣がどのような基礎的プロセスを通じて診断パフォーマンスに影響を与えるかは、依然として不明である。そこで本研究では、救急部へのGPの紹介状における診断の示唆が、インターンの診断能力に及ぼす影響について検討した。

方法:インターンは、ランダム化被験者内実験において、GPの紹介状としてフォーマットされた6つの臨床ケースを診断した。主訴を記載した診断案なしの紹介状2件(コントロール)、正しい診断案を記載した2件、誤った診断案を記載した2件を診断した。紹介状の質問と症例の順番はランダムにした。我々は、紹介状の質問がインターンの診断精度、鑑別診断の数、自信、および診断に要した時間に及ぼす影響を分析した。

結果:44名のインターンが参加した。インターンは、診断名が提案された場合よりも、診断名が提案されなかった場合の方が、より多くの診断名を鑑別に考慮した(M = 1.85, SD = 1.09)。この提案は、正しい(M = 1.52, SD = 0.96, d = 0.32) か正しくない((M = 1.42, SD = 0.97, d = 0.41),χ2(2) =7.6, p = 0.022 )かには関係なかった。診断提案は、診断精度(χ2(2) = 1.446, p = 0.486)、自信(χ2(2) = 0.058, p = 0.971)、診断時間(χ2(2) = 3.128, p = 0.209)には影響しなかった。

結論:GPからの紹介状における診断の提案は、その後のインターンの診断の正確さ、信頼度、診断に要する時間に影響を及ぼさないことが示された。しかし、提案の正誤は、診断の検討数を減少させた。医療従事者や教師がこの現象を認識することは重要であり、幅広い鑑別を育むことが学習を支援する可能性がある。今後、これらの知見が、より経験のある専門医やトリアージナースなど、後の診断プロセスに影響を与える可能性のある他の医療従事者に一般化するかどうかを検討する必要がある。