医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Does Walking Help to Generate a Differential Diagnosis? (Teach Learn Med 2021)

Kaminska ME, Rikers RMJP. Does Walking Help to Generate a Differential Diagnosis? Teach Learn Med. 2021 Aug 4:1-9. Epub ahead of print.

背景:医学において、正しい診断を下すことは、患者の健康と安全のために最も重要なことであるが、特に患者が典型的な疾患のパターンに合わない症状を呈している場合には、困難な作業となる。この作業は、すべての可能性のある診断を検討しなかったという判断ミスによって、さらに複雑なものになりうる。本研究では、OppezzoとSchwartzの2014年の研究で示されたように、歩行などの活動によって診断パフォーマンスが向上するというevidenceが増えつつあるなかで、鑑別診断の生成プロセスを調査した。本研究では、もっともらしい鑑別診断の数が多いことで表現されるパフォーマンスの向上が、ウォーキング群で見られるという仮説を立てた。

方法:臨床実習前の最後の2カ月間を過ごしている医学生18名と家庭医療レジデント2年目18名に、4種類の徴候・症状のリストを見せた。参加者は、各リストごとに5分間で鑑別診断を行うよう求められた。最初の2つのリスト(プレテスト段階)では参加者全員が座って行い、最後の2つのリスト(ポストテスト段階)では、座って行う場合とトレッドミル上を歩く場合とが等しくランダムに割り当てられた。また、生成された総鑑別診断数と固有の鑑別診断数を測定した後、3名の専門家パネルに提出し、適切な固有の鑑別診断を特定してもらった。

結果:Two-way mixed ANOVAsを実施し、運動が総鑑別診断数、固有鑑別診断数、適切な固有鑑別診断数に与える影響を調べ、テスト前とテスト後の段階で比較した。

結論:ある程度の専門性を獲得した集団の中で、座っているグループと歩いているグループが生成する鑑別診断の数や質は、増加も減少もしないと結論づけた。