医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Differential diagnosis checklists reduce diagnostic error differentially: a randomized experiment (Med Educ 2021)

Kämmer JE, Schauber SK, Hautz SC, Stroben F, Hautz WE. Differential diagnosis checklists reduce diagnostic error differentially: a randomized experiment. Med Educ. 2021 Jul 21. Epub ahead of print.

背景:誤った診断や見逃しは、医療ミスの大きな原因となっている。代替診断をつくることを促すプロンプト (prompt)や鑑別診断チェックリスト (DDXC)は、診断精度を高めることができるのか?また、これらの介入は、診断プロセスやセルフモニタリングにどのような影響を与えるのか?

方法:上級医学生 (N = 90)を4つの条件のいずれかにランダムに割り付け、コンピュータを使った6つの患者ケースを完成させた。グループ1(プロンプト)は、診断テストの結果を得る際に検討したすべての診断を書き出し、最終的に順位をつけるように指示された。グループ2と3は、同じ指示に加えて、患者の主訴に対する17の鑑別診断のリストを受け取った。半分の症例では、DDXCに正しい診断が含まれており(DDXC+)、残りの半分の症例ではDDXCが含まれていなかった(DDXC-;カウンターバランス)。グループ4(コントロール)は、最終診断を示すように指示されただけであった。結果の分析には混合効果モデルを用いた。

結果:正しい診断を含むDDXCを使用した学生は、チェックリストを使用しないコントロール群と比較して、診断精度が良く、平均(標準偏差) 0.75(0.44) vs 0.49(0.50), P < 0.001であったが、正しい診断を含まないDDXCを使用した学生は、0.43(0.50), P = 0.602とわずかに悪かった。取得した診断テストの数と関連性は条件によって影響を受けず、セルフモニタリングも同様であった。しかし、DDXC-条件では4分20秒(2分36秒)、P ≦ 0.001、DDXC+条件では3分52秒(2分9秒)と、コントロール条件の2分59秒(1分44秒)に比べて、1つの症例にかける時間が長くなっていた。

結論:可能性のある診断のリストを提供されると、提供されたリストに正しい診断が含まれている場合、鑑別診断リストの作成を促す場合に比べて診断精度が向上する。しかし、正しい診断が含まれていない診断リストを提供されても、診断精度は向上せず、わずかに低下する可能性があった。介入は情報収集やセルフモニタリングには影響しなかった。