医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Humility in medical practice: a qualitative study of peer-nominated excellent clinicians (BMC Med Educ 2022)

Wadhwa A, Mahant S. Humility in medical practice: a qualitative study of peer-nominated excellent clinicians. BMC Med Educ. 2022;22:88.

背景:謙虚さ (humility)は、近年、心理学や哲学など医学以外の分野でも、ポジティブで多面的な属性として概念化されている。しかし、医学の分野では、謙虚さの性質や臨床における役割に関する研究は限られている。我々は、同僚に推薦された優秀な臨床家の生きた体験を通じて、医療行為における謙虚さについてより深く理解することを目指した。

方法:あるアカデミックセンターにおいて、同僚に推薦された13名(7名(54%)女性)の半構造化面接の記録を二次分析することにより、質的研究を実施した。constant comparative analysisにより、臨床実践に関連する謙虚さについて議論された事例を分析した。

結果:参加者は、謙虚さは優れた臨床実践のための重要な推進力であると認識していた。さらに、このことは、2つの包括的なテーマ、すなわち、内向きの知的な視点と外向きの社会的な視点を使って説明された。医師の内面的な視点とは、自分の能力と限界に対する見方、自信、そして医学における知識の限界と進化に対する知的開放性と適応性のことであった。外側の視点とは、自分が働いている大きなシステムに対する理解と感謝、他人に対する寛容さ、そして患者の経験を大切にすることである。これらの観点から、謙虚さは、臨床ケア、学習と好奇心、他者のケアに対するモチベーション、そしてチームメンバーや患者との関係にプラスの影響を与えた。

結論:医療における謙虚さは、豊かで多面的な構成要素であり、同僚に指名された優秀な臨床医によって、優れた医療実践の推進力であると認識されていた。謙虚さは、臨床家の自己観・他者観を形成し調整する積極的な力であり、その結果、臨床実践にプラスの影響を及ぼすと考えられた。これらの知見は、医学教育やファカルティ・ディベロップメントにおいて、医療行為における謙虚さの重要な役割について議論する際に役立つと思われる。