医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The shift from disbelieving underperformance to recognising failure: A tipping point model (Med Educ 2021)

Gingerich A, Sebok-Syer SS, Lingard L, Watling CJ. The shift from disbelieving underperformance to recognising failure: A tipping point model. Med Educ. 2021 Oct 20. Epub ahead of print.

背景:多くのスーパーバイザーにとって、不合格にする必要のある研修生と対面することは厳しい試練である。これを受けて、監督者は数々の評価方法の見直しにより、不合格の証拠を報告することが奨励されている。しかし、一部の監督者は、研修生のプログラムの進行を変える可能性のある評価プロセスに関与することに消極的であるという兆候が残っている。失敗はすべての関係者に大きな影響を与えるため、まれではあるが、明確な研究が必要である。最近の研究では、成績不振を認識する前に不信感を抱く段階があることがわかっている。しかし、監督者がどのようにして研修生の失敗を認識するのかは不明である。

方法:カナダ・ブリティッシュコロンビア州の医師および外科医42名を対象に、構成主義的なグラウンデッド・セオリーの手法を用いて、大幅にパフォーマンスが低下した研修生を指導した経験や、大規模なremediationを必要とした経験、プログラムから解雇された経験などを共有した。iterative, constant comparative processを用いて、繰り返し出てくるテーマを特定した。

結果:パフォーマンス不足を信じないことから失敗を認識することへの移行には、次の3つのパターンが含まれる:significant incidentの積み重ね、無視できる程度の欠陥の後に重大な誤りを発見すること、他人に指摘されて見過ごしていた欠陥が明らかになること。失敗を認識すると、怒り、確信 (certainty)、そして被害を防ぐ義務感が伴う。

結論:訓練生が失敗する必要があると認識する時点に至ることは、ノイズがシグナルであることに初めて気づき、パターンがもはや異常ではないという閾値を超えるティッピングポイント心理的プロセスに似ている。怒りの感情が共存することで、感情が失敗を認識するための障壁になるだけでなく、その要因になる可能性がある。ティッピングポイントや怒りが改善の発見を妨げる可能性があるため、注意が必要である。今回の調査結果は、パフォーマンス低下の早期発見を支援し、失敗を報告することへの抵抗感を克服する可能性を示唆している。また、失敗が確認された後に改善を検出することの難しさを補う対策も考えられる。