医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Barriers to cross-disciplinary knowledge flow: The case of medical education research (Perspect Med Educ 2021)

Albert M, Rowland P, Friesen F, Laberge S. Barriers to cross-disciplinary knowledge flow: The case of medical education research. Perspect Med Educ. 2021 Oct 14. Epub ahead of print.

背景:医学教育研究分野は、高等教育 (higher education)と医学 (medicine)という2つの異なる学問の世界が交差する場所に位置している。そのため、この分野は、分野横断的な知識交換の新しい形を模索するユニークな機会を提供している。

方法:医学教育研究における分野横断的な知識の流れを、2017年にインパクトファクターが最も高かった5つのジャーナルの引用パターンを見ることで調べた。医学教育における知識の流れの特異性を把握するために、高等教育の分野を比較対象とした。合計で、2017年に出版された医学教育64件、高等教育41件の論文から2031件の被引用文献を調べた。

結果:医学教育の研究者は、高等教育の同業者に比べて、狭い範囲の知識コミュニティを利用している。医学教育の研究者は、健康・医学教育ジャーナルに掲載された論文を主に引用しており(全引用数の80%)、教育・社会科学ジャーナルに掲載された論文の引用は少ない。高等教育では、引用された文献のうちドメイン内のものが最も多い(36%)一方で、研究者は社会科学のあらゆる分野の文献を引用している。また、高等教育分野の研究者は、医学教育分野の研究者に比べて、より幅広いコミュニティや視点を持つ研究者と対話していることが示唆された。

結論:ピエール・ブルデューのドクサ (doxa)とフィールド (field)の概念を用いて、高等教育の研究空間に入る様々なエピステミックな文化が、その分野横断性に貢献していることが論じられています。逆に、医学における比較的均質なエピステミックな文化の存在は、分野横断的な知識交換を妨げる可能性がある。